しばらくすると、ガチャガチャっ。
玄関の扉が開き、パタパタと小走りして来る母のサンダルの音が聞こえてきました。
わたしは物置小屋から顔を出し、満面な笑顔を母に投げかけます。
突然、物置小屋から聞こえてきた自分を呼ぶ大声に、わたしの身に何かあったのではと心配していた母の表情が一気に緩みました。
「何?あんな大声でどーしたのよ」
「お母さんこれ!見てよ治ってきたみたい」
わたしが指をさした方向には、精液が飛び散った跡が広がります。中心にはゼリー状のドロドロした精液がいくつか落ちています。
「えっ…何?」
母はわたしが何を言っているのか訳が分からないようで、怪訝な表情を浮かべながら物置小屋内の状況を点検するように見渡しました。
底の抜けた段ボールと、散らばった成人雑誌。半開きの誌面から見える女性の裸。そして飛び散る白い液体。
「白いのが出てきたからチンチン治ってきてる!!」
わたしは追い討ちをかけるように、手のひらにこびりついた精液を見せました。
母はその手を取るとじっくり見て、ようやくそれがどういうことか理解したのか、わたしに背を向け固まってしまいました。
いつものように喜んでくれると思っていたわたしは、その母のしぐさに戸惑いながらも、とても悲しくなってきました。
「お母さぁん」
そう甘えた声で母の腰にしがみつきました。
これはいつも、わたしが不安なときにする行動でした。
しばらくすると母はこちらに振り返り、立ち姿のまま抱きしめてくれました。わたしは母のお腹に顔をギュウとうずめます。
「うんうん、わかったから~」
わたしは顔を上げると笑顔で頷きました。目にはわずかに涙が溜まっていたす。
母は両手でわたしの頬を優しく挟むとニコリとまた笑顔を作りました。
「じゃあ、ダイくん、先におうち入ってなさい!」
「うん!」
わたしは上機嫌にそう返すと、物置小屋を出て自宅に向かいました。
その後ろ姿を追いかけるように、
「ちゃんとオテテ、石鹸で洗うのよ~?」
物置小屋の中から母のくぐもった声が聞こえてきました。
<続きます>
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