母は車を走らせ、45分ほど走ると高速道路をおりました。祖母の家と実家の中間のあたりです。
「先にごはん食べていくー?それとも、ハンバーガーか何か買って、あっちで食べる?」
母に聞かれますが、「あっち」ってラブホテルのことでしょうか。
すぐに母から、「ああ。あっちって、今からホテルに行こうと思ってるから。」と告げられるのです。
僕は「食べていくー?」と返しました。落ち着く時間が欲しかったのです。
着いたのは、ハンバーグの有名な某ファミレス。緊張を隠すよう、自然に振る舞おうとしています。
そんな時間などすぐに過ぎてしまい、車はホテルへと向かってしまうのです。
「大丈夫よー。心配しなくてもー。マサくん、誰とすると思ってるのよー。」
緊張を見透かされ、母が声を掛けてくれました。確かに相手は母です。
僕の母親なんだから、遠慮なんていらない。全て、母に任せればいいのです。気楽にです。
ホテルに入りました。駐車場からお部屋まで、母に先導をされます。
気持ちは母に任せているのですから、初体験を全面に出しても、もう恥ずかしくもありません。
部屋の扉が開きました。中は明るく清潔感もあって、普通のホテルとあまり変わりません。
母は「疲れたー。」とバッグを置き、僕はベッドに座ります。
母はすぐにテレビをつけました。TBS系では、背の大きなおばさんが冠番組をしています。
僕はその頃、あるものをチラチラと見ていました。枕元に置かれた避妊具です。
それを見ながら、ここが普通のホテルではないということを理解するのでした。
母が急いでベッドに駆け込んで来ます。僕の横を通り過ぎ、手に取ったのはそのコンドームです。
そして、「これ着けてみるー?着けてしようかー?」と明るく言ってくれるのです。
後で分かりました。僕の緊張の原因となるものを、ことごとく母が消してくれていたのです。
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