【最終話】
父が出してきた要求。それは、かなりのことでした。
「10年間、実家の敷居は踏まない。親子の縁は切る。」
「10年間、母とは会わない。もし会っても、会話はしない。」
それが父の要求だった。しかし、それを言われた時には辛さはなかった。
「殴られるかも知れない。」とも思っていたからです。
でも、考えるうちに悲しさが込み上げてくる。母を失うこと。なにより、僕は家族を失うのだ。
そのくらい、僕と母がしてしまったことは重大といいことなのだろう。
父はそう告げると、席を立とうとしました。長居は禁物と思ったのでしょう。
僕はそんな父に、1つだけお願いをしてみました。父は少し考え、
「好きにしたらええわ。。ワシが死んだら、もう知ったことじゃないわぁ~。。」
と言ってくれるのです。その顔は呆れていました。「うん。好きにするー。」、僕はそう答えたのです。
父の父、つまりは僕の祖父は60歳。その兄は44歳。父の兄は28歳。我が家の男系はみんな短命なのです。
現在、父は64歳。家計的には、最近では長生きと言える部類。
僕はそこに賭けたのです。
【父と交わした契約(三項)】
・10年間、実家の敷居は踏まない。
・10年間、母親とは会わない。
そして、付け足しとして、
・もし満了をする10年を待たずに父親が亡くなった場合、この契約は解除される。「好きにしろっ!」
おわり。。
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