その日は土曜日でした。朝からスマホが鳴っていて、僕は起こされてしまったのです。
スマホを手に取ると、母からの着信です。「今日の予定かなぁ~?」と、ご機嫌で電話をとるのです。
「マサフミ?今から、お父さんそっちに行くから~。お話してあげて。。」
母はそう言っていました。ここ3日ほどセックスがご無沙汰だったので、その電話ではなく残念です。
電話を切り、少しリビングの片付けをしていた頃、またスマホが鳴ります。母です。
「マサフミ?。。お父さんに本当のこと話しなさい。。嘘なんかつかなくていいから。。」
母は真面目な声でそれだけ伝えると、電話を切りました。
「ただ事ではない。。」、バカな僕でもそんなことは分かります。
きっと、二人の関係についてなのです。
10分くらいして、チャイムが鳴りました。出迎えると、もちろん父です。
普段から無口な父なので、僕から「入るー?」と言ってあげて、父をリビングへと通しました。
何もないリビングに父が座り、僕はその前に正座をして座ります。
僕の顔が真剣なことで、父もなにかを分かっているようです。
「お母さんとのことなぁ~。。」
覚悟をしていたとは言え、このフレーズを出されると身体に緊張が走りました。
それに相手は父です。母の男なのですから。
「もう分かっているから。お母さんも全部話してくれてるから。。」
父の言葉に、少し落ち着きます。母がもう話をしているのですから。
それでも、「どこまで話した?」と勘繰ります。バカな僕は、まだそこまで深刻に考えていないのです。
「お前、お母さんとそんな関係になってるんだろ~?」
僕の精神は普通ではなかったようです。冷静でいるつもりが、この言葉に涙が出て来ます。
涙が溢れ、鼻水はしたたり落ち、呼吸も荒くなりました。泣いているのです。
ずっと怖かったのだと思います。母と関係を持って喜んでいても、どこかでは怖がっていたんです。
見つかる怖れ、母親と結ばれるはずもない怖れ、自分の中で気づかぬうちに悩んでいたようです。
「そうやな?。。そういうことやな?。。」
目の前で泣く息子を、父は叱ろうとはしません。ただ、その事実を確認するのです。
しばらくして、ようやく僕が落ち着きます。ずっと下げていた頭を上げると、父は余所見をしていました。
僕に気づき、「泣きやんだかぁ~?。。」と優しく言葉を掛けてくれるのです。
「お前はアホかぁ~?。。お母さんなんか、本気で好きになるなぁ~?。。」
父は笑っていました。普段、暗いイメージの父が笑って僕と話をしてくれています。
仲がいいとか悪いとかではなく、父とこうやって話をすることはあまりありませんでした。
話はいつも母と、父は『はぐれもの。』、それが我が家なのです。
そして、ここで僕は、父と「最後の契約」を結ぶことになるのでした。
※元投稿はこちら >>