喫茶店風のレストラン。僕の目の前には母ではなく、従姉の奈美さんが座っていました。
空いたイスにバッグを置くと、彼女が話し掛けて来ます。
奈美さんは流石に都会人。デートのようなこんな感じにも慣れているのか、まるで動じていません。
逆に僕はと言えば、変に意識をしてしまいます。経験値の差でしょう。
周りを気にしたりして、彼氏を気取るのです。
「楽しかったねぇー?また、おいでよー?。。」
それは、彼女のこの言葉から始まりました。その言葉に、奈美さんが親戚であることを思い出されます。
そして、「今度は彼女連れておいで~。どこでも連れて行くから。。」、と突き放されるのでした。
当然です。今日一日デート気分でしたが、彼女と会ったのは昨日。僅か昨日なのです。
「いるんでしょー?」
奈美さんが聞いて来ました。僕は少し考え、「はい。」と答えます。
こんな質問は生まれて何度もされて来ました。中には「はい。います。」とウソをついたこともあります。
しかし、この時は本気です。生まれて初めて、誰かに「彼女がいます。」と告げることが出来たのです。
「そしたら、Wデートしよう。私も彼氏連れて行くから。。」
奈美さんは嬉しそうな顔をして、そう答えてくれていました。
中学生の子供がいる彼女ですが、現在新しい彼氏もいるようです。どこか50らいフラれた気分です。
結局、1時半近く奈美さんとの食事を楽しみました。とても楽しい方で、少し惚れたかもしれません。
ただ、彼女の言う「Wデート」は実現しないと思います。
彼女はともかく、こちらは「母と息子」、組み合わせが悪すぎます。
改めて、人前で公表できる関係ではないことを思い知らされるのでした。
食事を終え、レストランを出ます。伯母の家までは、歩いて10分程度の掛かります。
奈美さんの手を取ると、「またぁ~?。。」と言われてしまいます。
僕は、「デートって言ったでしょ?奈美さんが言ったんよ?。。」と言い返してみました。
彼女は、「わかったよぉ~。帰るまでねぇ?」と言って、歩き始めます。
賑やかな商店街を逸れて、伯母の家のある細道へと入ります。なかなかの坂道です。
彼女は握った手を離し、僕の腕に手を掛けて来ます。
「デートだからねぇー!。。」
腕を組みたかったのか、上り坂が辛かったのかはわかりません。
どちらにしても、久しぶりに会ったのは従姉弟同士、この日だけは恋人気分だったことは確かです。
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