どのくらい抱きしめられていたんだろう。
ソファーから起き上がると、彼は私のブラウスのボタンを外そうとしてきた。
(ここでするの?)
私は一瞬だけ冷静になった
(ここは私の自宅)
(家族の大切な場所)
「お家じゃダメ」
彼に呟いた。
「じゃ、ホテル行きましょう」
と私の手を引いた。
彼とホテルに向かっている。
目的は1つしかない。
二人とも無言だった。
私はなぜ、断らなかったか、
拒否しなかったのか、
自分でも不思議だった
まだ間に合う。
いま、このまま、彼を振り切って、家に帰れば、元の生活に戻れる。
あれこれ考えていたら、ホテルに着いてしまった。
駅の近くのホテル、入ったことはない。
ホテルは満室だった。
ロビーの衝立で区切られた待合室で10分ぐらい待った。
彼も私も無言だった。
私は緊張を解すために「綺麗なホテルだね」と言った。
「緊張してます」と言う彼に、キスをしてあげた。
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