『夏祭りの夜に、息子の友達と』④
リビングへ戻ると、長男が外から帰ってきていて、それを確認した主人は
寝室へ戻ったようでした。(主人とワタシは同室で2Fです。)大抵はワタ
シより先に寝てしまいます。我が家は深夜0時までにはだいたいリビングを
消灯して、みなそれぞれ寝室へ戻っていくのです。長男は風呂へ入る準備を
しています。翔馬くんは「お邪魔してます」と長男へあいさつをして、ダイ
チと一緒にダイチの部屋へ上がっていきます。(ダイチの部屋も2Fにあり
ます。ワタシたち夫婦の寝室と同じフロアです。)翔馬くんはもう何回かダ
イチのところへ泊りにきていますので、長男とも顔なじみですし、長男はダ
イチやダイチの友達にそれほど構うような性格ではありません。
その後、長男が入浴している間に私はリビングやキッチンをあらかた片付け、
長男が上がってくると短時間だけ長男とお喋りをし、長男は明日もアルバイト
があるとのことで自分の部屋へ戻っていきました。(長男はリビングの横の和
室です。本来は和室をワタシたち夫婦の寝室にしてもよいのですが、2Fへ上
がるのが面倒くさいといって、長男が長らくそこを使っています。)
最後にワタシが入浴し、上がってきたのが0時少し前。家族はすでにそれぞれ
部屋に戻っています。ワタシも就寝のための身支度をし、0時半にはリビングな
ど1Fをすべて消灯し、2Fへと上がりました。主人はすでに寝息を立てていま
す。ダブルベットではなく、シングルベッドを2つ置いている寝室ですので、ワ
タシは間接照明をつけて、しばらく婦人誌などをめくっていました。ダイチの部
屋は静かになっているようです。おそらく夏祭りのあとも遊びまわって、2人と
も疲れて寝てしまったのでしょう。長男は1Fの部屋で起きているかもしれませ
んが、まず2Fへ上がってくることなどありませんし、寝たいタイミングで寝る
のです。高校生ですから夜更かしをしようと、さほど干渉はしません。
しばらくすると、ダイチの部屋のドアが開いた音が聞こえました。
どちらかがトイレにでも行くのでしょう。ダイチは夜でもドタバタと音を立てて
歩くのですが、静かな足音です。どうやら翔馬くんのようです。トイレへ入った
音が聞こえたタイミングで、ワタシも寝室から廊下へ出ました。出るときにもう
一度主人を確認すると、深い呼吸をしてぐっすり眠っているようです。とっさに
ハンドタオルを1枚手に取って、寝間着の内側に潜ませました。トイレから出てき
た翔馬くんはまた「あっ」という表情をして、寝間着姿のワタシを見ました。ブ
ラはもう外していますし、もともと薄化粧ですが、寝る前ですから完全にスッピ
ンです。翔馬くんから見れば、中年のオバサンといったところなのでしょう。ワ
タシは小さな声で「ダイチもまだ起きてる?」と聞きました。「いや、すぐ寝ち
ゃいました。しばらくはテレビをつけて喋ってたんだけど、口数が少なくなった
な~、って思ったら、寝ちゃってて。とりあえずテレビは消して、スマホいじっ
てました。ボクもそろそろ眠くなってきちゃったんで…」。
翔馬くんも遊び疲れているのでしょう。すでに目がトロンとしています。でもワ
タシが「起きていてね」と言ったのが頭に残っていて、なんとか起きていてくれ
たようです。ワタシは「大きな声では喋らないでね。ダイチ起きちゃうとマズイ
から」とささやいて、翔馬くんをエスコートする形で一緒にダイチの部屋へと入
りました。ダイチはいつも通りベットでぐっすり寝ており、深めの寝息を立てて
います。床にもうひとつ布団を敷いてあります。友達が泊りにきたときには布団
で寝てもらっているのです。部屋の中はすでに消灯されていましたが、レースの
カーテンだけが閉めてある状態でしたので、厚手のカーテンも閉め、翔馬くんに
は布団に横になるようと促しました。もうほとんど室内は真っ暗です。ワタシも
疲れたようなふりをして、翔馬くんの布団の隅にゴロンと横になり、翔馬くんに
カラダを寄せるようにしながら、仰向けに横たわった翔馬くんの肩や胸に手をお
き、何度か優しくカラダを撫でました。翔馬くんは少し緊張しているようで、カ
ラダを硬くしていたので、耳元で「ラクにしていいよ。ゆったりしなさい」と囁
きました。
すると少しカラダの緊張がほぐれたのか、翔馬くんは「ふぅ~…」っという深
い呼吸をつきました。
(続きます。)
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