お姉ちゃんとの朝食の時間も、ほとんど無言でした……。
これまでの人生で、2人でこんなに言葉のない朝を迎えたことなんて一度もありません。
味気なくて、砂を噛むような時間。喉を通るものも味がしなくて、ただ胸が苦しいだけ。
私はお姉ちゃんの顔をそっと見つめます。
何か、絶対に隠している気がする。でも、私は何も聞けなくて、ただ耐えることしかできませんでした。
レンタカーを返して、電車に揺られながら瀬戸大橋を渡っています。
窓の外に広がる瀬戸内海のきらめきが、涙でぼやけます。
「お姉ちゃん……私、もっと頑張るよ」
お姉ちゃんは何も言いません。
「朝も一人で起きるよ。部屋の片付けもちゃんとするよ。充電器も、差したままにしないよ……」
全部、これまでお姉ちゃんに何度も注意されたこと。
声が震えて、途中で詰まってしまいます。
「だから……安心して、彼氏さんと一緒になって。私も……彼氏、作るから」
喉が熱くなって、言葉の端々が震えます。
「そうしたら、ダブルデートしようね。私とお姉ちゃんと、お姉ちゃんの彼氏さん、私の彼氏……」
そのとき、お姉ちゃんの手がそっと私の手に重なりました。
温かくて、優しくて、包み込むように握ってくれます。
「お姉ちゃんの彼氏さん、きっといい人なんだろうな。早く会いたいな……」
お姉ちゃんはまだ何も言いません。
ただ、私の手を強く、強く握りしめてくれていました。
そのぬくもりが、壊れそうだった心に、ほんの少しだけ灯りをともしてくれます。
高松駅に着いて、ポケモンストアに入ったとき——。
お店の中は人でいっぱい。
私はお姉ちゃんの手をぎゅっと握ったまま、色とりどりのぬいぐるみたちを眺めました。
お姉ちゃんが、久しぶりに私に話しかけてくれます。
「ののか、この緑のぬいぐるみ、何?」
胸が熱くなって、声が弾みました。
「レックウザだよ!」
「……そっか」
お姉ちゃんは頭上のミュウのぬいぐるみを手に取って、
「かわいいね……」
「そうだね! ねぇ、同じの買おうよ」
少しの間を置いて、お姉ちゃんが小さく微笑みました。
「そうだね」
その言葉だけで、胸がいっぱいになって。
私はお姉ちゃんの手を引いて、次から次へと話しかけました。
周りの人たちが不思議そうに見ているのも気にならなくて、ただお姉ちゃんの声が聞けることが嬉しくて、嬉しくて、笑顔が止まりませんでした。
お姉ちゃんの表情も、少しずつ柔らかくなっていきます。
その変化が、愛おしくて、たまらなくて。
その後も兵庫商店街を歩いて、小さなカフェに入ったり、行列のうどん屋さんで並んだり。
私はたくさんおしゃべりして、お姉ちゃんは優しく相槌を打ってくれます。
当たり前だった日常の時間。
でも今は、それがどれだけ尊くて、脆くて、かけがえのないものだったのか、痛いほどわかります。
お姉ちゃん……
まだ、離れたくない。
この温もりを、ずっと感じていたい。
私は笑顔の裏で、必死に涙を堪えながら、
お姉ちゃんの手を離さないように、ぎゅっと握りしめ続けていました。
大好きすぎて、壊れそうで……この旅が終わらないでほしいと、心の底から願ってしまうんです。
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