お姉ちゃん……今夜が、本当に最後だと思っていました。
商店街の入口にあるホテルにチェックインして、部屋に入った瞬間から胸が張り裂けそうでした。
シャワーを浴びてベッドに入ると、お姉ちゃんはもう静かに眠っていました。
私は迷いました。同じベッドに潜り込みたい衝動に駆られて……でも、結局は隣のベッドに横たわりました。
暗い部屋に、お姉ちゃんの穏やかな寝息だけが響いています。
明日になれば、実家に帰って彼氏のことを報告して、あの部屋からもいなくなってしまう。
今夜で、全部終わりなんだ……。
その想いに耐えきれなくて、気がつくと私はお姉ちゃんのベッドの前に立っていました。
震える指で頰をそっと撫でながら、溢れる気持ちを全部、眠るお姉ちゃんに注ぎました。
「お姉ちゃん……大嫌いって言って、ごめんね。あれは嘘だよ。本当はね……大好き。大好きすぎて、どうにかなりそうなくらい、お姉ちゃんのことだけを想ってるんだよ」
涙が、お姉ちゃんの寝顔にぽたり、ぽたりと落ちます。
「それとね……私、嘘をついた。約束、守れないよ。ホテルの予約も、部屋の掃除も、一人でできない。
彼氏なんか、絶対に作れない……」
声が震えて、喉が熱い。
「だって……お姉ちゃんのことが好きだから。お姉ちゃん以外の人を、好きになんてなれないよ」
膝をついて、お姉ちゃんの肩を抱き寄せました。
温かな体温が、指先に染みて、胸の奥が甘く疼きます。
「だから……ダブルデートなんて、できない。ごめんね……
最後に、わがままを聞いて。お姉ちゃんと、キスしたい」
震える息を吐きながら、ゆっくりと顔を近づけました。
「お姉ちゃん……大好き。大好きだよ……私の、お姉ちゃん……」
そっと、唇を重ねました。
柔らかくて、甘くて、ずっと夢に見ていた感触。
すると——お姉ちゃんの腕が、私の背中に回って、強く抱きしめ返してくれました。
キスを、深く、熱く返してくる。
唇が離れた瞬間、お姉ちゃんは目を開けて、私を見つめていました。
お姉ちゃんの瞳から、大きな涙が溢れています。
「泣かないで、お姉ちゃん……」
私がそう囁くと、お姉ちゃんはさらに強く私を抱きしめ、震える声で言いました。
「ののか……私、最低の姉なの。ずっと、ずっと、あなたを騙してた……」
私は驚いて、お姉ちゃんの顔を覗き込みました。
「私ね、ののかのことが好きだった。ののかといると本当に楽しくて、少しずつ綺麗になっていくののかを見て、胸が熱くなって……
でも、ある日、あなたが泣きながら帰ってきた。スカートがボロボロで……私はすぐに分かった。許せなかった。私の大事なののかを傷つけた誰かを、許せなかった」
その日の記憶が蘇って、私は無意識に自分の身体を抱きしめました。
「でも同時に……最低なことを思ってしまった。『これで、ののかを私だけのものにできる』って……
大好きな人が傷ついて泣いているのに、私は自分の欲だけを考えていた」
お姉ちゃんの声が、嗚咽に混じって震えます。
「その日から、私はののかのことだけを考えて動いた。
あなたを手に入れようって……やがて、ののかが私に触れて、キスをしてくれるようになって……
嬉しかった。ののかも私を求めてくれているんだって。でも、心のどこかでずっと罪悪感が……」
お姉ちゃんは、私のキスに気づいていたんです。全部。
「島根での夜、ののかが耳に息を吹きかけたときの気持ちを知りたくて聞いたのに、何も言ってくれなくて……
ののかは私を姉以上には見てないんだと思った。だから、嫌われてしまおうって、わざと酷いことを言った。彼氏がいるのも嘘。
ののかを傷つけて、嫌われて、一生一人で生きていこうって……」
お姉ちゃんが大きな声で泣きながら、私を抱きしめます。
そんなお姉ちゃんの泣き顔、初めて見ました。
胸が熱くて、愛おしくて、たまらなくて。
私はお姉ちゃんを優しく胸に抱き寄せました。
いつもお姉ちゃんがしてくれたように、髪をゆっくり撫でながら。
「泣かないで、お姉ちゃん……
隠してたこと、全部話してくれて嬉しいよ。何より……私のことを好きだって、言ってくれたことが」
お姉ちゃんが顔を上げます。
涙で濡れた瞳が、私を真っ直ぐに見つめて。
「お姉ちゃん……大好き」
「私も……ののかが、大好き。大好きすぎて、どうにかなりそうだった」
私たちは見つめ合い、唇を重ねました。
今までの人生で、一番深くて、一番甘くて、一番幸せなキス。
お互いの涙が混じり合って、熱い吐息が絡み合って、
この瞬間だけは、誰も邪魔できない、私たちだけの世界でした。
お姉ちゃん……
やっと、繋がれた。
ずっと、ずっと欲しかったこの温もりを、
今、ようやく全部、受け取ることができました。
この愛は、もう離しません。
永遠に、私のお姉ちゃんのものです。
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