陸上部にいたという学生時代の賜物なのか、50歳になった母は今でも体型が崩れた感じはない。
それはコートを着ていても判った。
自宅にいた頃の僕はキッチンに立つ母の姿をリビングから幾度も盗み見た。エプロンを張らした胸は大きくはないけれど形が良く、垂れることのない丸いお尻、
太ももやふくらはぎはデニムなど服越しにも締まっているのが判り、
その姿を脳裏に焼き付けたまま、オナニーの材料にしていたのだ。
そんな母と並んで歩く僕は、中学生の頃から現在に至るまでの気持ちや行動が全て見透かされているようで
複雑な気持ちだった。
ほんのりと紅潮した横顔、いかにも気が強そうでいて慈愛に
満ちた二重の目、小さくて高い鼻、横から見ると一層よく分かった。
「N叔父さん達がお酒勧めてくるから結構飲んじゃったわ」
こちらを向いた母から慌てて視線を前に向けた。
この時間が長く続いて欲しい気持ちと、一刻も早くホテルの部屋で母を想像して何度もオナニーが
したいという不道徳な気持ちが入り混じったまま、駅前のビジネスホテルに到着した。
親戚が予約してくれたビジネスホテルの部屋は当然ながら別々だった。
チェックインを済ませ、ロビーで注いだ珈琲を持ってエレベーターに乗ると
「あなたの部屋で飲んでいい?」
突然の言葉に戸惑っていた。
さっきから痛いほど勃起したままの僕が、母と二人きりになったら・・・。
現実的には理性によって母に襲い掛かることなどなく、それ以前に強烈に拒絶され、何よりも
母子の関係は終わるだろう。
そんなことを思いながらもエレベーターを降りて僕の部屋に入った。
「良い部屋を予約してくれたじゃない」
はしゃぐ様な母は窓際にある椅子に腰かけ、僕はベッドに座った。
珈琲飲んだら出るわね、と言いながら別れを惜しむように母は話しかけてきた。
仕事は忙しいかに始まり、翌日の朝食はどうするか、実家に寄らずに帰るのか、など思いつく限りと
いう感じだ。
それほど時間も経たずに会話が途切れ、
「もう眠いでしょう、ごめんね」と立ち上がった母を
ドアまで見送ろうとした僕は何も考えていなかった。
僕は母を抱きしめたのだ。
コートを着たままの母はビクンと大きく動いたけれど、声を上げることもなかった。
見上げる母の唇に自然にキスをしていた。
お互いの唇が触れるだけのキスであったけれど、夢に見た母の唇の
柔らかく、僕を興奮させた。
本当に何も考えていなかったけれど、拒絶されないように無意識だったのかも知れない。
ゆっくりと母の口内に舌を滑らせた。
珈琲とアルコールが混じった複雑な味と甘い唾液の味が僕の口の中に広がる。
これまで経験した女性と何も変わらない。
不思議なほど抵抗もされずに、キスをしたままベッドに腰を掛けた。
そっと僕の体を押し離した母は
「親子なのにね」と小さく言った。
それは僕になのか、自分になのか、解らない口調だったけれど、
再び、吸い寄せられるように互いの唇が重なった。
さっきまでと違い、お互いに大きく口を開け、舌を絡ませるキスだった。
コートとジャケットを脱がせ、背中に手を添えてベッドに倒すと
横を向いたまま「明かりを消して。それと、テレビを点けて」
とつぶやく母を愛おしく思った。
それでいて、初体験の時みたいに慌てた僕はダイヤル式のスイッチを間違えて部屋を明るくした。
そんな僕を見上げ微笑む母がすごく大人に見えた。
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