新ママがこの事に気づいたのは全くの偶然だったようだ。
レナ連れて親父のクリニックの待合室にいると珍しい名字を看護師が呼んだ。
「?」何となくその名前が気になり立ち上がった親子をみると如何にも親父の好みそうな親子だったと言う。親父のナビに残っていた足跡で辿り着いた家の表札と同じ初めて聞く名字、親父の患者の少女、ほぼこれも確信したのだと……
待合室で順番を待っているとその母子が診察室からでてきたのでさりげなく話しかけた。
「◯◯◯さんて、珍しいおなん名前ですね」と、
意外に気さくに答えてくれてお互いの娘の病状などを障りのない程度に話したのだという。
ご近所からかと聞くと隣の市を言いそれも合っていたので間違いないと思ったのだ。
あまり詳しく聞くと変に思われるのでそれくらいにしているとレナが呼ばれてそれっきりとなった。
もちろん診察とか言っても親父とは一つ屋根のしたの親子なので形式的なものだ。看護師とも顔見知りなので雑談をするだけなのだが看護師の一人に年輩のお喋り好きなのがいる。観察室をでたあと会計を待っていると2階のリハビリ室に行こうとその看護師がでてきたので例の母子の情報を聞き出した。
「ああー、◯◯◯、◯◯◯ちゃんね?」とあっさりとフルネームを聞かせてくれた。もちろん新ママが先生の奥さんになってレナが娘になったことも知ってるので気軽に話したのだろうが「もしかしたら知り合いの方かも、◯◯◯◯市から来てます?」とカマをかけると「ちがうかな、あの子は◯◯◯市だから」
なぜそんな遠くからと聞くと「先生は以外と……あら、イガイは余計だわね、でもけっこう遠くから患者さんが来るくらい評判がいいんですよ~?」と、誉めたような貶したような返事をすると2階に上がっていった。◯◯◯市も間違いなかった。そんな偶然などあるはずがないと思い確信したのだという。
俺のアパートに着くとレナの面倒を見ている妹から新ママに連絡が入った。
「あら、レナが吐いたんだって、…クスリの副作用だと思うのよね、たまにあるの」
その夜は新ママとはそこで別れた。
新ママが去っていく車の赤いテールランプをぼんやりと眺めながら複雑な思いを巡らせ立ちすくんでいた。
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