ベッドに二人で戻ると新ママが時計をわざとらしく見る。
「ずいぶんと丁寧に洗ってもらってたのねレナ」そう言って俺を見た。
「うん、スッキリだよなレナ」と言って腰を引き寄せて体をくっつけるとレナがうっすらと笑った。
「スッキリなんだ」新ママも笑う。もちろん風呂の中で二人が何をしていたかはわかっているだろう。
「じゃあスッキリしたところでおうちに帰ろうか?」ママが言うと「あっ、」という顔をして俺の手を振りほどくと隣の部屋に小走りで入っていく。
そして大事そうに両手で現物大の大きさの柴犬のぬいぐるみを抱きしめて戻ってきた。
「えー、かっわいいねえレナ、お兄ちゃんにもらったの?」ママが言うと頷いたあと俺を見上げた。
こういった小さな反応に少しずつだが回復の兆しが見えるのだ。
「レナちゃんのほうが可愛いけどな」しゃがんでレナの腰に手を当てると顔を左右に振るのだ。ぬいぐるみのほうが可愛いと、会話が成り立っていた。言葉なんか要らないのだ、これでいい。
「またこないだのワンちゃんの所に行こうな」立ち上がってぬいぐるみの茶色い頭を撫でるとそれをぎゅっと抱きしめて俺を見上げ大きく頷いてくれた。
確信した。レナは回復をする、と。
帰りの車の中でも、車を降りて家に入るまで柴犬のぬいぐるみを抱きしめたまま一度も離さなかった。
こんなに喜んでもらえるならもう2つくらい買ってあげても良かったなあ~、と幸せのお返しをもらってアパートへと車を走らせていた。
そして次は妹をアパートに連れてくるのだがアパートの窓を開け放って掃除をした。
できるだけ新ママの臭いを消しておきたかったのだ。
もちろん妹は部屋に新ママとレナが来ていて兄と何をしていたかは知っている。それでも匂い抜き位は最低限の礼儀だろう。妹は俺の彼女なのだから。
ベッドのシーツなども洗濯機に入れてコロコロで髪の毛等も掃除して疲れはて、休憩がてらここにレスを書いていたら意外に時間がなくなって慌てて妹を迎えに行ったのだ。
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