親父と口論になってしまった。
新ママからとんでもない情報をもらってソッコー家に駆け込んだ。
今日は親父のクリニックは休診日だったが妹も学校を休んで親父と出掛けたと言う。その行き先を聞いて逆上してしまった。
あの、妹の中絶処置をしたキチガイ医者のクリニックだというのだ。妹は普段から生理が不順で痛みもひどいときがあるのは知っていたがその診察に、なにもわざわざあの遠くまで、近所の婦人科でいいだろう。
電話で新ママが俺の剣幕に驚いてアレコレと言い繕ったが納得が行かない。当たり前だ。先方のクリニックは普通に診療日なのでスタッフも他の患者もいるのだからおかしなマネはしないだろうと新ママは言うがそういう問題じゃない。あの野郎が妹の体を触るというのがもう許せない。
そこに妹を連れていった理由はわかってるんだ。
他の医者に診察させたくない理由があるからだ。妹の生理不順の原因追求をされたら困る理由だ。血液検査などされたらヤバいものが出てくる可能性があるからに違いない。「だいいちあんただって医者だろっ!散々使ってきたくせに膣の診察もできねえのかよっ」
怒鳴る俺に平然とコーヒーなど飲みながらニヤニヤしている親父に更に頭にくる。
「医者ったってなぁ、俺は心療内科の精神科医だ。脳の中は専門だがオマンコの中は気持ちいいくらいしかわからんよ」くだらん事を言うのだ。
親父の大学の後輩なので他の医者より丁寧に診察してくるから連れていったと言い張るのだ。
しまいにはチクったと自分の妻を責めはじめる始末。それ以上騒ぎ立てると新ママにもレナにも悪いと思って途中で収めようとした所に妹が2階から降りてきた。
「お兄ちゃん、心配できてくれたの?」と言う。
「おまえ、体は?」努めて平静に聞くと薬も飲んで痛みも収まったと言う。出血は続いてるが常識的な範囲のものだというので安心した。
「明日も休んで養生すれば良くないか?」と勧めると頷いてそうすると言う。
「お兄ちゃん、学校に連絡してくれる?」と妹が言うので親父の顔を見ると手のひらを「どおぞ」と言うように差し出したので「わかった、俺が電話しておくから、今日はもう寝ろ」妹に言うと頷いてリビングを出ていった。
「お前はアイツの事になるといつもムキになるよなあ」新しくコーヒーを自分で淹れながら後ろ向きで笑う。そして居心地が悪そうにソファーに座っている妻の隣に座ると肩を抱いて「こいつは妹のことになると逆上するかさらさ、あまり情報を流すな」と耳元に囁いた。新ママは頷くとチラッと俺の顔を見たあと「はい……ごめんなさい」と返事をした。
「こいつは自分の妹に男にしてもらったからムリもないんだがな」俺に当て付けのように新ママの腰を抱き寄せて笑った。
少し困ったように俺の顔を下から掬い上げて見たママが「◯◯◯ちゃん、可愛いから」と誤魔化すように呟いた。
アパートに帰って来てスマホを開けると妹と新ママからのラインが連なって入っていた。
穏やかな夜は昨日の夜一晩だけだったようだ。
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