なぜ突然そんな話?
親父の悪行絡みを書こうかと思ったがやっぱりやめておこうと思う。文字に書くのもおぞましい。
妹が新しい妹の手を引いて俺とホームセンターで簡単な調理器具などを買い込んでアパートに戻ると直ぐに電気量販店の運送屋から電話があった。冷蔵庫が届き何となく生活感のある部屋になった気がする。
「ここはね、お姉ちゃんのおにいちゃん、このオヤジね?だからこれからあなたのお兄ちゃんの家だからいつ来てもいいんだからね?」俺の了解も得ずに妹が勝手にそう言う。新しい無口な妹が俺の目を不安そうに見上げた。
「んー、そーだぞ、困ったこととかあったら来るんだぞ」と言うと俺の目を見つめたままゆっくりと、でも確実に頷いて見せた。
「あ、カギだ、合カギ作り忘れた」妹の突然の大きな声にビクッとしたその子が妹と俺を交互に見ると言葉を発したんだ。
「おねえちゃんに……お店でるとき言ったよ」そう言った。
「えー?マジで?お姉ちゃん聞こえなかったよ、ごめんな~、ありがとお~」妹がその子の肩を抱き寄せて頭を撫でる。
と、言うことでまたそれからホームセンターへ三人で戻ると俺の部屋の合鍵を2本頼み出来上がる間に買い忘れた物を買ってアパートに戻った。
一本は妹に。もう一本は小さな新しい妹にキーホルダーをつけて手渡した。
「新しいパパにはナイショだぞぉ~、これ使ってここに来たいときにはいつでも入っててもいいんだからな、わかったか?」俺が言うと目を細めてニッコリと笑い頷いた。
妹がそれをみてその子にヒソヒソと耳打ちをするとその子が俺を見る。そして……
「おにいちゃん、ありがとう」と言ってくれたのだ。
妹が朝ポニーテールの髪をついんに結び直した可愛らしい頭を撫で「どういたしまして」と慇懃に胸に手を当てて頭を下げると妹の顔を見上げてまた笑顔を見せてくれた。
もしかすると妹の言うとおりこの子は回復できるのじゃないだろうかと思った。
そういう意味では妹があの家に残るのは大きな意味がある。
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