妹はたとえ薬物を使って洗脳を深めたとしても健常者であり追求すればクチを割る可能性がたかい。でもあの娘の患っている発達障害というのは一度刷り込まれ信じ込ませられた事には頑なに変更を拒むという特徴がある。そこをいいように利用されている可能性がある。
飲ませている薬物は合法的な抗うつ剤だろうから娘の所見からは違法な物という判断は成されないと思う。ただし、使い方が問題で娘の症状から使うべき薬か、または量的な問題はあるのかも知れないが。
法律事務に実は知り合いがいる。まだ駆け出しで弁護士バッチはつけたばかりだが秘守義務が仮にあったとしても知られたくはない。法的な対処はもう少しだけ先に伸ばしたい。おれ自身はもちろんだがこの件に関与する全員のためにも。
俺自身はまだ妹の更正を諦めきれない。あれの母親は本当に優しい女性だった。その女性が産んだ娘もまた言葉の端々に血を受け継いだかと思わせる優しい一面を見せているのだから。何もかもぶち壊すのは本当の最後の最後にしたい。
ただ何度も進言していただいている妹への注意勧告は確かに必要だろうと考えている。
やはり折角そのために休みもとって随分と心も落ち着いたのでアパートの内覧は二軒ともしてきた。やはり家賃の高い方が二人で暮らすにはいいが……どうするかと迷い中だ。俺は26にもなるがこの世界ではまだまだヒヨコだから(大学を二浪してるため)経済的にも家賃のない親父の家を出るとなればそれなりに節約が必要になる。 万が一妹と暮らす事になれば親父に担架を切って飛び出すだろうから金の援助をしてくれとは言えないし親父も認めないだろう。今乗ってる車ももっと、エコノミークラスに乗り換えなければと思っている。何を犠牲にしても妹を連れてこの家を何とかして出たい。
バカ兄でけっこう、俺はこれ以上妹を壊したくないだけだ。
妹が昼に親父と帰って来たのでクリニックで何をしてたのか尋ねるとあの母親と娘の診察予約が午前中に入っていたので娘と遊んでやってきたのだと言う。
家に連れてくればいいだろうと言うと家の家政婦さんと会うのが気まずいと母親が言っているらしい。
やはりあの日家政婦さんの方も気がついたが母親もスレ違った時に気づいたようだ。
それほど深い付き合いじゃないとはいいながらも同じ市内、自分の素性を知る人間と会いたくないような事情があるということだ。
妹が冗談なのか本気なのか俺の尻をポンと叩いて言った。
「検査キットはお兄ちゃんが買ってくれんだろ?」
「おま、え……俺を嵌めただろう」と言うと吹き出して
「ハメタのはお兄ちゃんだろ?私はハメラレタほうだし~」バカなシャレを言って2階へ上がってしまった。確信犯だ。
親父の事だ、ピルでも飲ませていたかも知れないし、実際に検査をしなければわからないが……確率は五分五分か。
何れにしても大失敗には違いない。
※元投稿はこちら >>