昨夜は自分がどんなに甘くダメ雄君であるかを知る夜となった。
妹は俺の部屋にはとうとう朝まで来なかった。
風呂から上がるとまっすぐに親父の部屋へと入る音が聞こえていた。廊下に出てみればきっと親父と妹の交わす怪しい囁きや恐ろしい妹の喜びの声が聞こえたことだろう。俺は怖くてベッドから出られなかった。
今でも妹は親父の玩具から抜け出せてはいないのだと思い知った。親父のプロとしての洗脳はそんな簡単には解けるものではないのだと……
折角癒えはじめた生傷の瘡蓋を爪で剥ぎ取るように妹の自立を決して許さないつもりなんだと。一見俺に妹の全てを譲り渡したと見せかけてその実は友釣りの鮎のように妹を泳がせては俺を操り、妹をどこまでも自分のための道具として扱うつもりなのだと気付いた夜だった。久々に一人のベッドで眠れない夜を過ごした。自分の人として、人間として、兄として、男としての情けなさを朝まで噛み締めながら一睡もせずに窓が明るくなるのをただじっと待っていた。
日付が変わってしばらくした頃、親父と妹の二人が階段を下りていく足音を聞いた。そして風呂の折戸を開ける音。耐えられずに俺はイヤホンを両耳に突っ込むとその状況に全く相応しくない曲をアホみたいな音量で聞いていた。
妹がいつ来てもいいようにベッドの端に寄っている自分に気づき自己嫌悪な苛まされていた。
ここは魔物たちの住む屋敷なのだと思った。もちろん俺も含めての性の快楽に囚われた狂気の家族の家なのだと……
それでも日常は情け容赦なくやってきて俺はいまこうして職場に来ている。
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