二人を親父が車で送って行った。
2階の自分の部屋で娘と昼食ができるまで過ごした妹の話では殆ど口をきかなかったと言う。
頷く時もあれば聞いているのかどうかわからないほど無口で無表情だったり、妹が以前に親父のクリニックで会ったときよりも「悪化してるかも……」と言う。
時折全く無関係の意味不明な独り言をブツブツと話したりもするらしい。
「自律神経にダメージあるのかも……」という妹の診断。何故かそう言ったあと妹は無口になって暗い顔をした。どうしたのかと尋ねても答えなかった。その代わり俺の質問には答えずこう続けた。
「私があの子、なんとかする……あのままじゃかわいいそう」と、
口には出さなかったが俺の感じた事と同じ事を妹も感じていたに違いない。それは口に出せないほど恐ろしい事だから予想が外れていればいいと思った。もしかするとだが……
親父は薬であの子をコントロールしようとしているカモシレナイ。あくまでもこれは「かも」という推測を出ない話だが……。
親父の目論見通りに話が進めばあの母親と娘は俺たちと近い将来同居する事になるだろう。母親と親父とは親子ほど歳が離れているがその辺りのことは全く気にならないと母親は言っていた。そして確かに生活は苦しいようだ。国から母子家庭へのわずかな補助金はあるが娘を連れての外食さえままならない程の話だった。クリニックでの診療費は親父がたてかえ、生活費も助けているらしい。
あ、これは話の筋とは全く関係ない話だが夕食の支度にもう一度来てくれたヘルパーさんが親父の車に乗った奥さんと娘をスレ違いに見たそうなんだけど世間と言うのはマジで狭いものだと思う。
その家政婦さんが言うには「あの二人、私きっと知ってる人よ」と言うのだ。
いきさつは互いに話さなかったが世の中どこでどう繋がっているか分からないものだ。
ま、これは余談である。
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