家の近所の時間貸し駐車場に真っ白な新車のホンダがあった。本当だ!かっこいいなぁ。俺は思わず声を上げた。
早速、運転席に潜り込む。奈々子が助手席に乗り込んで来た。キーを捻った途端に大音量で激しいロックのリズムが流れた。
俺が慌ててカーステレオの音量ボリュームを落とす。びっくりしたー!素っ頓狂な声を上げた俺を助手席で奈々子が笑う。
何これ?何の音楽?!俺が尋ねると奈々子はセックスピストルズだと答えた。
いかにも良家のお嬢さま然とした奈々子の口からセックスという単語が飛び出した事に俺は驚いた。
セックス?俺がまた素っ頓狂な声を上げると、奈々子はまた笑いながら、そうセックスピストルズ。ピストルズだよ。知らないの?と運転席でどぎまぎしている俺の顔を覗きこむ。
知らない。なんだか凄い名前のバンドだね。と言う俺にイギリスの有名なパンクバンドだよ。と笑いながら奈々子が教えてくれた。
意外だな。奈々ちゃんこんなのを聴いてるんだ。クラッシックとか聴いてるのかと思ってた。ピアノとか習ってるんでしょ?
えーピアノなんて子供の時に習ってただけだよ。
それより何処に行こうか?奈々子はカーステレオを弄りながら俺に尋ねる。
え?その辺を一周するぐらいじゃ無いの?と答えた俺に、え?だって夜までずっとあの人達呑んでるよ、いつも10時くらいまで呑んでるじゃん。そのくらい迄に帰って来れば良いじゃん。何処か遠くまでドライブしようよ。戻ったってつまらないし。
奈々子は外見のイメージとはだいぶ違う事を言い出した。
ねぇ、郁夫君は煙草吸うの?
え?狼狽える俺を尻目に奈々子は膝に置いたハンドバッグから大人の女性が当時よく吸っていたメンソールの細無い煙草を取り出して手慣れた手つきでライターで火を付けた。
深く煙を吸い込んだ後、助手席のウインドウを下げ煙をふーっと吹き出した後、私が煙草吸ってるのパパにもママにも内緒ね。と俺の顔を覗き観ながら言う。
郁夫君は?吸う?と煙草の箱を俺に差し出した。
俺がいや、俺は吸わないと言うと、奈々子はふーん、煙草吸わないだ、つまらないの。真面目なんだね。と言って窓の外を見つめている。
そして何かを思い出したように吹き出して笑ったあと、じゃあ郁夫君は童貞?セックスしたことある?と俺に向き直り笑みを浮かべて聞いてきた。
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