弟にレイプされてから、私は素直に弟を受け入れられなくなっていた。
親の前では、つとめて普通に振る舞ってはいたが、弟とは距離を置いていた。
しかし、仲の良い姉弟がギクシャクしている異変に、母親だけは勘づいていたようだった。
「あなた達がケンカなんて、珍しいわね?」
私達の気まずい関係を聞き出そうと、母はカマをかけて来る。
私はともかく、弟が口を割れば、破滅してしまう。
そう思った私は、あの先生に相談した。
ショック療法が必要だと言われ、弟と二人で自宅に来るように言われた。
二人とも忙しかったが、彼女の指定した日時に、家へ行く事になった。
弟は罪悪感からか、私の言うことに素直に従ってくれた。
あんな事があった後でも、私の中には可愛い弟を憎めない気持ちがあり、あんな事をした弟を許せない気持ちもあって、自分の気持ちさえも、もて余していた。
週末、久し振りに姉弟で彼女の家へ出掛けた。
移動中も、あまり話ができず、気まずかった。
電車とバスを乗り継いで着いた先は、長い塀に囲まれたお屋敷だった。
入り口で出迎えてくれた先生は、お屋敷に似つかわしくない洋装だった。
高級そうな服を身にまとった彼女は、上品な雰囲気を醸し出していて、同性ながら見とれてしまうほど美しく見えた。
「お招き頂きまして、ありがとうございます。」
私が挨拶をすると、弟は緊張した様子で頭を下げた。
塀の内側は古風な日本庭園と、洋風の要素が入り交じっていて、奥に見えた大きな瓦屋根のお屋敷を引き立てていた。
私達は、その脇を通りすぎ、奥に見えた洋風の建物へ通された。玄関脇のスペースには高級外車が二台停められていて、数台分のスペースが空いていた。
「今日は、主人も出掛けているから、楽にして良いわよ」
と言われた。
中に入ると、静かにクラシックが流れていて、アロマの甘い香りが漂っていた。
内部は、割りと質素な造りだけど、機能的で、持ち主の人柄を物語っていた。
吹き抜けの広間の螺旋階段で二階の一室に通されると、そこは淡いピンクを基調とした応接間のような部屋で、窓からは広いベランダと田園風景が見渡せた。
私は、その部屋で待つように言われ、先生は弟を連れて、部屋を出て行った。
※元投稿はこちら >>