ハードな内容に慣れた方には大したことない話かも知れませんが私にとっては隠して置きたい物でした。ただの思いで話とは違い「もの」があるとなるとやはり状況は違います。如何に好きの先にある行為とは言えども人格を疑われても仕方がないと思います。ましてや妹にとっては自分の実の兄ですから。 そう、妹に見られてしまいました。
姪っ子をお迎えに行き妹が仕事から帰り、親父が姪っ子の顔を見にきて四人で食事をして穏やかな夜を過ごしました。
さて、その日曜日は町会の新年会がありましたが妹は家の掃除がしたいからと不参加であり親父が代わりにと姪っ子を連れて午後から行ったのです。もう大体は分かったと思いますが、全くその通りになってしまいました。
妹が私のベッドのシーツや枕カバーを洗濯しようとして何気に引き出しをあけたところ物々しいアルミのケースを見つけてしまいました。いえ、正確には「だと思います」になりますか。
しかし鍵さえ掛けていれば「何が入っているのかな?」位で何も問題はなかったのですが、あんなケースがあれば中が知りたいのは常識です。子供のころ妹と二人で廃屋のなかの探検で例の箱をドキドキしながらあけたように……
新年会から帰ったときの妹は普段と何も変わった様子はありませんでした。親父を交えて四人で夕食を食べ自宅へ帰り姪っ子がお風呂に入ると暫し二人っきりの時間です。妹が食器を洗い始めカウンターの向こうから私に話しかけました。
「あのさぁ、今日ね?お兄ちゃんの部屋を掃除したらね?困ったもの、みつけたんだけどさぁ…」 ドキドキしながらも平然を装いながら「なにを?」と答えました。少し間があり思いきったように「ずうっと前、わたしの紛失したパンツ」……
言葉が出ませんでした。「ずいぶん大事にしてくれていたみたいだけど?」と、食器棚の整理をしながら背中向きで言いました。アタッシュケースに鍵を掛けた覚えがないことにその時気がついたのです。妹が私のお茶を用意してくれながらリビングのソファーに座り続けました。 「ごめんね?悪気はなくって、……でもね?あれ、棄ててもいいかなぁ、」と言いました。私が黙ったまま固まっていると立ち上がり私の横に座りました。
私の首に腕を回して抱き締めると「ながいあいだ、辛かったのよね?」と慰めてくれたあと「だけどさ、もう要らないでしょ?…… もういつでもお兄ちゃんの思う通りになってあげられるんだからさ、」と、
私は妹を抱き締めてただ「うん、うん」と頷いただけで一杯でした。自然に涙が溢れました。妹が呆れたように笑い私の背中を子供をあやすように叩きながら囁きました。
「あんなに大事にしていてくれて嬉しかったんだよ? でもさ、他の誰かに見つかったら相当ヤバイじゃない?」と、 私がやっと小さく「ごめん」と言うと笑いながら「バカあにき……」と言いました。 「おれさ、」私が話そうとすると妹が遮るように言いました。
「だいじょうぶ、お兄ちゃん、大好きだよ?」と、
結果オーライではありましたが大事なコレクションは速攻で無くなりました。しかも月曜の燃やせるごみで……
確かに親父や姪っ子に見つかった可能性も無かったとは言えずその場合は家族の幸せは完全に崩壊したでしょう。
しかし何かにつけて思うのは「なぜこんな身も心も可愛い女が妹なのか」、です。
他人ならばあんな野郎に取られたりしなかっただろうし、姪っ子だって私の娘だったはずなんですから。
世の中にはこんな想いをしている人がどれだけいるのだろうか、と。今の私にできることは姪っ子を幸せな大人に育てること。妹をたいせつにして幸せにすること。
そう堅く誓った夜になりました。
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