お見合いを終えてから、娘の花嫁修行にも、熱が入ってきた。
先方の意向は、既に仲介した人に届いているらしいが、娘は一週間経っても、答えを出せずにいた。
業を煮やした仲介者から、二人きりで会わせて、デートをさせたらどうか、と申し出があった。
数日後、娘は手作り弁当を用意して、デートに出掛けた。
父親は、娘を心配して落ち着かず、そんな夫に妻も苛立ちを募らせていた。
「あなたがソワソワして、どうするの?」
「ちょっとは落ち着きなさい」
嫁は亭主を諌めた。
娘がお弁当を作る時に余ったオカズは、夫婦の昼食になるはずだったが、夫は妻の目を盗んで、こっそり摘まみ食いをしていた。
娘を心配するあまり、ストレスで食が止まらず、妻が気づいた時には、皿に盛られていた娘の手料理は、すっかり無くなっていた。
「あなたってひとは、、、」
妻は呆れたように苦笑いした。
「そういえば、、、」
と切り出した妻は、自分達が婚約していた頃の話を始めた。
義父はデートで遅くなると、いつもソワソワしていて、玄関の外に出て帰りを待っていたという。
妻は笑いながら話していたが、夫はデート現場に行きたい衝動を抑えていた。
夫婦揃ってモヤモヤした気持ちを抱えたまま、夕飯を食べていたら、娘が帰ってきた。
夫も妻も、娘に聞きたい事は、たくさんあったが、黙って自室に戻った娘に、声もかけられなかった。
次の日には、いつも通り仕事に出て行ったが、仲介している人からは、娘が様子を探る電話が来たので、何かあるのは察した。
つづく
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