それから数日はギクシャクしていたが、父娘は直ぐに関係が戻った。
娘は再婚の事を口にしなくなり、平穏な日々が続いた。
ある日、娘は取引先の男性社員に見初められ、告白された彼女は、父親に何でも話して相談した。
これまで娘との会話で、よその男の話などした事もなかった父親は、平然を装おって、理解のある親を演じたが、内心複雑な心境だった。
妻を亡くしてから5年余り。
色々とあったが、仲直りできた娘との生活が、幸せだった。
日に日に、妻に似て来た娘と一緒にいると、新婚生活をしていた頃を思い出していた。
娘にとっては、初めての彼氏。
父親に交際を認めて貰いたくて、必死に説得した。
熱心に説得された父親は、職場の同僚にも相談して、渋々認める事にした。
父親公認で交際を始めた娘は、週末になると嬉しそうに出掛けて行き、帰って来ると父親にデートの話をした。
娘の話を笑顔で訊いていた父親だったが、進展する二人の話を訊く内に、微かな嫉妬心が生まれていた。
以前は、食事が終った後も、週末も一緒にテレビを見たり、遊びに出掛けていた日常が、今では食事の時以外の会話も無くなってしまった。
食事を終えると、娘は自室に籠って、電話で楽しそうに話していた。
一人寂しくテレビを見ていた父親の耳には、時おり娘の笑い声が、部屋から漏れ聞こえて来た。
娘との会話も、徐々に減ってきていた。
娘も彼氏と交際して一ヶ月になると、相手から身体の関係を求められていた。
会社の友人に相談すると、
「もう、お互いに大人なんだし、自己責任でしょう?」
「あんまり待たせてばかりだと、カレに捨てられちゃうよ?」
と言われたが、自分が処女だとも知らない友人のアドバイスは、却って彼女の心を悩ませていた。
娘は匿名のネットで知り合った私に、これまでの経緯を話して来た。
最初は、ハタチ過ぎの処女が、彼氏とエッチを躊躇っているという相談だったが、色々と話をしている内に、整合性の無い脈絡に、疑問を抱いた私は、学生時代の話から、母親の看病や死別した事、父親の再婚についてまで聞き出して、彼女の相談にのった。
私からのアドバイスは、
「誰にでも初めてはあるんだし、大人なんだから、みんなが言う通り、自己責任で、処女を捧げる相手を選べば良い」
と書き込んだ。
処女を捧げるなんて、一生に一度の事だし、後悔しないように、自分で決めたら良い。
私も初めては、家族(弟)だったから、彼女の気持ちにも同調していた。
そんな時、彼の方から突然プロポーズされた娘は、その事を父親に報告した。
(とうとう、この時が来たか、)
覚悟をしていたとは言え、娘の幸せを願う父親としては、祝福しなければならない。
先に、彼の実家へ挨拶に行った娘は、片親の家庭である事も話した上で、気に入って貰えたと、父親に報告した。
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