ガレージに車を停めると程なくしてシャッターが下り、表通りにある街灯の光が
遮断された。
シャッターの開閉によって数分間だけ灯る蛍光灯がガレージに停まる3台の車を照らした。
父の乗用車、SUV、そして僕と母を乗せたワゴン車。
助手席で眠る母の顔を見つめた。艶のある髪、切れ長の目を覆う瞼は美しい曲線を描き、
小高い鼻、形の良い唇が小さな顔に収まっている。
首から下に視線を移していくと小振りだが柔かそうな胸がセーターを張らせていた。
母の胸に手を伸ばす僕の耳に自分の鼓動が大きく聞こえていた。
触れる程度に乗せた手の重みだけで母の乳房はふんわりと沈んだ。
アルコールの匂いがする溜息を吐いた母が身を攀じり、僕は慌てて手を退かす。
蛍光灯が自動で消え、ガレージ内が暗くなると僕はやっと正気に戻った。
(こんな場所にいつまでもいられない)
声を掛けても起きる気配のない母を抱えて家に入るしかない、と僕は助手席に回りドアを開けた。
母を抱きかかえようと肩甲骨と膝裏に手を回す。
持ち上げた母がくったりとし、僕の手に柔らかな髪が触れた。
しっとりとした母の項から微かなフレグランスに混じり、女性特有の甘酸っぱい匂いが
立ち込め、僕の鼻腔をくすぐった。
僕の中で何かが弾け、気が付くとフルフラットにした後部座席で横たわる母を見下ろしていた。
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