2017/05/15 12:24:34
(cWtNa0my)
10日程前のことでした。普段は絶対に覗きもしない母の部屋の前に立ったのです。扉も開いたままになっていて、隙間から机の上のパソコンが見えたのです。
最新型のパソコンでした。母は昔からパソコンをやっていて、新機種が出るとカタログを貰って来たりして、3年に一度買い替えるのです。趣味ですね。
最新型に僕も触れたくなってしまい、キーワードを叩きました。普段は絶対にパスワードを掛けている母ですが、買ったばかりなのか普通に使えました。
そこに、書き掛けのエクセルの画面がありました。見ると日記でした。日付は昨日のもの。僕は、母がパソコンで日記を書いていることを初めて知ったのです。
几帳面な母らしく、結構こと細かに書き込まれていました。
他人の日記は面白いものです。パソコンのフォルダーに母の日記を探したけど他になく、よくよく調べると、差し込まれたDVDにあることが分かります。
急いでDVDを抜き、僕は自分のパソコンにコピーを取りました。ここから、母の最近が分かるのでした。
DVDには、約9ヶ月分の毎日の日記が書き込まれていました。『~さんとお話をした。』とか、『~で何を買った。』とか、細かく記されています。
そして、ここ一ヶ月くらい前から『ゆうくん』と言う男性が登場をして来たのです。息子の僕でさえ、『怪しい。』と思いました。
そして、『~時から、ゆうくんとホテル。』という文字が出て来ました。しかし、母が知らない男性とホテルに行ったのに、不思議と冷静に読んでいました。
男が登場して、女性と出逢い、そして関係を持つ。自分の母のことなのに、文字で読んでいるせいか、小説でも読んでいる気分です。
しばらくして、今度は完全に母の部屋に忍び込みます。DVDを取り出し、またコピーをしたのです。まさに、昨日の日記が書き込まれていました。
『午前中にゆうくん来る。電話待ち。』と書かれていたのです。それを見ての今回の行動でした。
母は自分なりに僕に説明をしたと思ったのか、寝室に入って、掃除を始めました。落ち込んでいて、元気がありません。
床をタオルで拭き始めたを見て、二人が風呂あがりだったことにも気づきました。ベッドの上に転がったスキンの袋を片付ける姿も、絶望感でいっぱいです。
僕に気づいた母は、力ない声で『もう見んとって…。』と僕に言い、扉を閉めました。
半分泣いている声でした。