私の幼い頃の話。
両親共に仲が良い訳ではなかった…父は個人で請け負いの仕事をし、たまに仕事に行くふりをして釣りや自由を満喫していたようだ、母は専業主婦として家庭を守り家族4人(父、母、私、弟)と団地に暮らしていた…。
何も知らない私達は怖い父を恐れ、常日頃から夕飯のオカズ等、父に差し出し機嫌を損ねないようにしていたものだ…それでも父の機嫌が悪い時には暴力を振るわれ、現在も母の片方の耳は鼓膜が無い…。
いつ頃からだろう…時々、昼間に母が機嫌が良さそうに私達に話しかけてくる…
『今日はお昼過ぎに歌の先生が来るから、静かにして部屋で待っててね!解った?』
幼い頃の私達は、はい!としか言いようがない…母は当時まだ20代後半だったはず、今思えば、それが始まりの終わりだったのだろう…。
チャイムが鳴り、イソイソと玄関に向かう楽しそうな母の姿を見て、妙に私も嬉しく思えていた…。
『いらっしゃい!今日も宜しくお願いします。』
そう言うと母は白髪混じりの男と必ず6畳の夫婦の寝室に入って行く…最初は母の歌声が聞こえ、さも練習しているように…。
老いた私の記憶が確かなら、今でいうリビングルーム?の隣の部屋(私達の待機部屋)と両親の寝室は押し入れ越しに繋がっていた(2LDK)…数回目の訪問時、私達は母と先生と呼ばれる男を脅かしてやろうと押し入れに忍び込み、そっと寝室側の襖に手を掛けて開けてみた…。
私の目に写った光景は…カーテンを閉め切り、薄暗く湿った部屋に、当時まだ普及していたラジカセの音楽だけが流れていた…。
少しづつ音を出さない様に…襖を開ける…薄暗い部屋に
、なぜか大きく膨らんだ布団が敷かれ、もぞもぞと、しぼんだり、膨らんだりを繰り返す…。
幼いながらに、凄い興奮を覚えている…何?何?…お母さんは何をしてるんだろう…と…。
しぼんでいた布団の中から2本だけ足全体が…見ていた私の方に出てきた…同時に布団の左右が膨らみ、悲鳴のような母の声が聞こえた…!
『あぁぁっっダメっ!ダメそこは…ダメェェッッ!!』
驚いた…初めて聞く母の声に…。
それから暫くして………………つづく