時代は昭和である。几帳面な母は、毎日欠かさず日記を付けていた。そして、
私は母の日記を見てしまった。そこに綴られていた事は・・赤裸な母の性記録
だった。
母の日記と言っても、注意しなければならない点がある。この種の日記、それ
も女が書いた日記には、暫し「願望」が書かれている場合がある。つまり、内
容が全て真実だとは限らないのである。
日記の信憑性について言えば、少なくとも相手の男が日記に登場した頃は母の
記述も一方的であり、母の男に対する思慕が書かれているに過ぎない。当初か
ら性的な表現は含まれていたが、その内容には信用できない部分が有った。し
かし、日付が後になるにつれて表現は具体的になってくる。そして私は、読み
進むに従って、ある種の確信を持ってしまった。母は不倫していると・・!!
「二駅離れた場所で待ち合わせ。先生の車に乗って湖に着いたら、二人並んで
歩いたわ あなたが私の腰に手を回したら、掌から体温が伝わってきた。
いけないと思いながらも 身体が燃えてきた。わたし 演技したわよ・・・
「いやよいやよ」と拗ねてみたわよ・ でも 先生は見抜いてる」「先生に抱
擁された時 汗とタバコの匂いがしたわ 先生の体温が忘れられない 平和な
家庭は大切だけど 私はやめられないと思う。
先生の匂い 先生の肌は塩辛い味がした 唇を吸われた時 身体の芯が溶けそ
うになったわ」
以上は初期の記述である・・書き方が、まるで少女である。しかし、ある日を
境にして内容は一変した。その内容は、いつか気が向いたら書くかもしれな
い。