学校から帰り、着替えもそこそこに友達の家に行こうとガレージ兼物置に自転車を取りに行こうと思い近付いた時、ガレージの中から声が聞こえた。
母親が居るんだと思い、裏側のドアを開けた、そこで見たのは母親の尻が捲られジーパンを足首まで下ろした若い男が母親と下半身を密着させている光景だった。
俺は、その光景に驚きと同時に息を飲んだ、ヌプヌプと音が響き声は出さないが母親の荒い息が響く、俺が入った瞬間は母親も若い男も俺に気づかず、盛んに下半身をぶつけ合っていた。
車に両手を付き身体を支え母親は尻を突き出している。
俺は、あまりのショックに振り返りガレージを出ようとした時に母親と若い男は俺に気づき、動きを止め俺の方を振り返った。
その時の母親の表情は今でも脳裏にこびり付き忘れられない。
俺と目が合った瞬間の表情、それが一瞬に恐怖の表情に変わり言葉は出ないが、何か言おうとするように口元が歪む。
俺は、そのまま家に入った。
部屋に閉じこもって、じっとして居た。夜7時を過ぎても母親から夕飯の声が掛からない、その時に母親も俺に見られた事で、相当に狼狽え何か言い訳を考えて居たのだろう。
父親は単身赴任で、ここの所、ずっと帰って来ない日が続いていた、8時を過ぎた頃に階段を踏み締めゆっくりと登って来る母親の気配を感じた。
部屋の入り口に佇む母親の気配に俺は、わざとにテレビのボリュームを上げた。ドアが少し開き母親の姿が見える、少し躊躇った後に母親は意を決したように部屋に入って来た。
「‥‥ごめんね」
今にも泣き出しそうな母親の声。
俺は無言で母親を無視するようにテレビに視線を送り続けた。
ドアの所で立ち尽くす母親から、それ以上の言葉は出て来ない。
「夕飯は未だ?」
俺がボソリと言うと母親は、ハッと我に返った様に
「出来てるけど冷めてしまったから温め直すわ、後で下りて来て」
と言い部屋を出た。20分ぐらい経って俺は台所に下りた。無言でテーブルに座り支度された食事に手を伸ばす。
母親は何もする事は無い筈の流し台に向かい俺に背を向けたままで居る。
暫くすると母親が微かに背中を震わせ
「ごめんなさい」
と呟くように言う。