戦争も終わり昭和30年の中頃、私が4歳か5歳の頃、家で内職の仕事をする母親と毎日、過ごしていた。
いつ頃から時々、隣の爺さんが来るようになり、その度に「坊、お菓子でも買って来い」と言われ十円玉をくれる。
その当時では子供に取っては十円は大金であった、「気をつけて行くんだよ」母親が言う。
私は田舎道を十円玉を握りしめ、勇んで駄菓子屋に向かった、「良く一人で来れたねぇ」駄菓子屋の、お婆ちゃんが目を細めながら言う、私は得意気に強がってみせた。
あれこれ迷いながら欲しい物を買うと、詰めてくれた紙袋が破れないように、確りと抱え家に帰る。家に帰ると内職をしている所に二人は居たり、時には奥の部屋から出て来たり、しかし、そんな事には頓着せずに紙袋を開き買ったばかりのお菓子に夢中になっていた。特に暑い日に爺さんが来て、いつもの様に十円玉をくれ私は家を出る。
暑い‥と思いながら家の横を流れる小さな小川に足を突っ込み、暫く水遊びをした、お菓子を買わなくては!と思い出し駄菓子屋に走って向かう途中に、空模様が変わり突然に雷鳴が鳴り響き出す。急に怖くなった私は暫く立ち尽くし、振り替えると一目散に家に向かい走り出す。
私を追い掛けるように雷鳴と共に大粒の雨が襲って来た、私はびしょ濡れに成りながら家に駆け込み、そのまま奥の襖を開け母親を呼んだ。
そこで見た光景は、素っ裸の母親が仰向けになり爺さんも素っ裸で母親にのし掛かっている光景だった、当時の私には、それが何を意味するのかも分からず、ただ、その時の母親と爺さんの凍り付いたような表情だけが今でも頭に焼き付いている。
慌てて上にのし掛かる爺さんを押し退けようとする母親、爺さんも跳ね退きバツが悪そうに私に背を向けると脱いである服に手を伸ばす、母親も体を隠すように脱いだ服を掻き集め、それで前を隠すようにしながら「向こうに行ってなさい」と強い口調で言う。母親に叱られたと思った私は半べそをかきながら母親達に背を向けた。
衣服を身に付けた母親が直ぐに近づき、先程とは全く別の口調で私に話し掛けて来る。
「何してたの?」おどおどと聞く私に、「母さん急にお腹が痛くなって、それでオジサンにお腹を押さえて貰ってたの」幼かった私には理解も出来る筈もなく、母親の言う事を聞くしかなかった。
それからも同じように時々、爺さんはやって来て毎回、同じようにこ使いを貰っていた。でもある時から私は不思議に思い‥