目の前で痴漢されている母の姿を見てしまったが、行為の意味を理解出来な
かった私は「その事」を忘れるのも早かった。当時は小学生だった私には、
触られている母の姿などに興味は無かった。母が目の前で性器を弄られてい
たとしても、そもそも当時の私は、性器を「おしっこをするところ」としか
思っていなかった。激しく興奮した母の顔や漏れてきた呻き声も、全てはラ
ッシュで押されたせいだと思っていた。
「その事」があった翌日から、母は再び私の隣に座って通勤した。私は、電
車の座席に母と並んで座れる事が、単純に嬉しかった。そして、平穏な一週
間が過ぎた後に、私が通っていた私立小学校は夏休みになってしまった。
その年の夏は猛暑だった。当時の通勤電車は冷房車が少なくて、冷房が入っ
ている車両は「冷房車両」と表示してあった。しかも、連結されている全て
の車両に冷房が入っている訳ではなく、通勤電車の後部車両はラッシュ時専
用に増結した車両なので、冷房車が接続される事など絶対に無かった。
この頃の母が並ぶ乗車位置は箱の最前部か最後部のどちらかであり、車両の
中央部に乗る事は避けていた。そして、気分次第では、母は更に後ろの車両
に乗る事もあった。私はホームの「その場所」が大嫌いで、母の乗車位置・
つまり私が乗せられる位置は、ともかく最低の場所だと思っていた。そこは
階段から遠くて、その付近に止まる車両には、大規模団地が在る途中駅か
ら、乗客が傾れ込む様に乗ってくる。だから、最初は空いてても、後から酷
く混雑するのである。そこには冷房車など絶対に来ないし、場所がホームの
端なので、階段から遠くて屋根も無い。だから雨の日などは、私達は傘を差
して電車を待たなければならなかった。そんな訳で、私には母が「その場
所」を好む理由など、まるで理解できなかったのである。
9月になって新学期が始まっても、残暑は厳しかった。「お母さん、前の方に
冷房車が来るから、そっちに乗ろうよ」と私が言っても「冷房車は身体に悪
いわ」と、そっけなく母が言う。母は橋上駅の階段を「下り方向」に向かっ
て降りると、軽やかに尻を振りながらホームを歩き出した。そしてその日
は、後ろから2両目の最前部に並んだのである。母と私が乗車待ちの列に並ん
だ時、隣の列に並んでいた男の人が、なぜか母のすぐ後ろに移動した。そし
て、別の列に並んでいた男の人も母の後ろに移動した事を、私は見逃さなか
った。
電車が到着してドアが開くと私達は、我先にと座席を確保しようとする人達
に後ろから強く押された。母と私は車両の奥まで運ばれてしまった。私が最
奥部「箱の最前部」の座席を確保すると、母は私の隣に座ろうとした。しか
し、母は後ろから来た男に遮られて座る事が出来なかった。母の行く手を遮
った男は、並んでいた時に隣の列から母の後ろに来た男だった。少し遅れて
OL風「当時の言い方だとBG」の若い女性が乗り込んできた。母とその女性は
並んで立つ事になった。そして、その周りを囲んで男達が群がった。
母のスカートが捲られ始めたのは、電車が走り始めて直ぐの事だった。見る
と、母の顔は、もう既に赤みが差していた。まだ乗客の間に隙間が有ったの
で、座席からは母の様子が手に取るように見えた。母の隣にいる若い女も触
られていて、その女はしきりに指で鼻の辺りを撫でている。そしてそれは、
明らかに興奮の印だった。やがて次の駅で大勢の乗客が乗り込むと、母は激
しく壁に押しつけられた。押されながら身体を捻った母は、壁に尻を向けて
サラリーマン風の男と密着してしまう。
電車が混んできたので見にくかったが、それでも完全に見えない訳ではなか
った。私の席は壁際なので、母の身体はかろうじて見えていた。母は、男の
手で脇腹から横尻にかけて、そろりそろりと撫でられていた。
母は股間に太腿を捩じ込まれていて、男の胸に顔を押し当てて喘いでいた。
やがて再び男の手が母の黒いスカートを捲り始めるが、タイトスカートなの
でなかなかスカートは上がらない。すると男は両手でスカートの端を持っ
て、強引に母のスカートを上げてしまった。座席からの僅かの隙間からは、
肌色のパンティーと黒いスリップが見えた。母は顔を横に向けていて、その
顔を強く男の胸に押しつけている。そして母は、辛そうに喘いでは身をくね
らせていた。
もしかして、痴漢にとっては正面から密着するのは不利なのかも知れない。
男はスカートを捲り上げたのはいいが、なかなか母の部分に触れられなく
て、難儀している様子だった。しかし、母が少し身を捩った瞬間に、男の手
は、遂に母の部分を捉えた。「あぁぁ~っ」と、母が堪らずに声を出す。母
は男の胸に押し当てていた顔を、更に強く押しつけて、喉から絞り出すよう
な呻き声を漏らした。そして・・・その時である。母の側に居た若い女が声
を出し始めた。「あぁぁぁ~っ あぁ~っ」と、女は連続して声を漏らし始
めた。そして、その声に釣られるようにして、母も喘ぎ始める。「う~っ
はぁ~っ」と母は身も世もない声を上げ始めたのである。やがて母の声は強
い呻き声に変わって、母は全身を痙攣させて悶えるた。
やがて、男は母の耳元に何かを囁いた。母が、いやいやするように顔を横に
振る。しかし男は母の手を持って、自らの股間に導いてしまった。やがて母
が男の股間を弄り始めると、男の手は再び母の淫部に移動した。その間に
も、姿は見えないが若い女の喘ぎ声は聞こえ続けている。やがて母が、声の
する方に顔を向けると、母は言いようのない程の優しい顔になった。そして
母は、声を出している女に向かって微笑み続けたのである。