むかし、むかし、正人と沙織と言う大変仲のいい男女がいたそうな。
その男女は近々結婚式を挙げることが決まっていて、「結婚をしたら元気な
子供を作ろう。」と言っていたそうな。
でも、正人は結婚式の前の日に事故で亡くなったそうな。
沙織は大変悲しんで、寝込んでしまったそうな。そんな彼女の枕元に、再三
正人が現れ、「元気な子供を作ろう。」とにっこり微笑んだそうな。
沙織はそのことを正人の父親政三に言うと、「それは、正人の怨念だ。この
ままでいると正人は成仏できん。私の知り合いの祈祷師にどうしたらいいか
聞いてみよう。」と、二人で祈祷師のところに出かけたそうな。
祈祷師は「正人は今でも沙織を愛しておる。結婚前二人で誓い合った子供を
どうしても欲しがっている。でも、自分が沙織を抱くと、子供は出来るが沙
織が死んでしまう。だから、自分の最も身近な男性に乗り移って、沙織を抱
くことにする。沙織はその男性と10日間、昼も夜も同じ家で暮らし外に出
ることも無く抱いてもらうんだ。」と、言ったそうな。
正人は兄弟もいなく、最も身近な男性といえば正人の父親政三だけだった。
政三は妻を5年前に亡くしており、幸いにも一人暮らしだった。
沙織と政三は、10日間の食糧を買い、政三の家の閉じ篭ったそうな。
家の雨戸を閉め、窓には厚いカーテンをし、玄関にも鍵をかけ、部屋の布団
を敷き、10日間夜も昼も抱き合って裸で暮らしたそうな。
その甲斐あって沙織は妊娠、10ヵ月後には玉のような可愛い女の子を産ん
だそうな。しかし、沙織は正人が乗り移っている正人の父親政三に抱いても
らった10日間が忘れられず、政三と結婚し幸せに暮らしたそうな。
これが昔から父や母に聞かされてきた我が家の物語です。
そのときに出来た子供が私、マサコなんです。
ですから父と母の年齢差は32歳。しかし、あれから15年経って私の兄弟
は5人、今8人家族になっています。今でも父と母は仲がよく、いつも二人
でお風呂に入るし、毎晩母の喘ぎ声が聞こえてきます。
このままで行くとあと一人や二人兄弟が増えそうです。
そして、我が家には母と結婚するはずだった、父の子供の正人の仏壇が祭ら
れています。