「秀人、お二階で宿題をしてらっしゃい」
母親の声に当時の私は少し不機嫌な表情を見せると
「少しの間、お兄ちゃんに昼寝をさせてあげないと駄目だから言うこと聞きなさい」
お兄ちゃんと言うのは当時、我が家は増築中で仕事に来て居た若い職人さんであった。
私の父親は警察官で、かなり厳格な家庭でもあった。
私は、しぶしぶ二階に上がり然程、身にも入らない宿題を片付けていた。
当時、何の疑いも持たずに職人さんの作業の音が聞こえ始めると階下に降りて行く、その時の母親は絶えず機嫌が良く私にジュースを出してくれて居た。
夏休みの真っ最中の、そんなある日も、いつものようにお昼を食べ終わるて母親が宿題をするように言う。
それが当たり前のようになり私は二階に上がり宿題を始めたが直ぐに尿意を催し階下のトイレに行く。
居間で毎日、暫くの昼寝をしてる筈の職人さんが居ない、キョロキョロと辺りを見回したが母親の姿も見当たらない。
居ないんだぁ!と思い、それでも私は習慣の様に二階に上がろとした時に、階段の奥の部屋に人の気配を感じた、私は何の躊躇いもなく部屋に近づく。
「誰か来るといけないから早くして」
小声で催促するような母親の声、カサカサと布が擦れ合う音。
「早く来て貴方の、それで今日も私を貫いて」
再び母親の声、その後直ぐに母親の呻き声が聴こえる、男の低く呻く声と母親の声が重なる。
聞き耳を立てていると「奥さん、も‥もぅ」「あ~ぁぁ、私も‥来てぇ貴方もいってぇ」と母親の呻く声。
私は、ここに居たら不味いと思い、とっさに二階に上がる。
それでも母親の事が気になり、つい今しがたの母親の声が耳から離れない。
やはり居ても立っても要られず私は再び、そろりと階段を降りたと同時に奥の襖が開き、片手で髪を拭いながら母親が現れる、スカートから半分だけブラウスは、はみ出し上気した表情の母親、その後に続くように若い職人も部屋から出て来る。階段下で私と出会した時の母親の表情は、あれから随分の時が過ぎたが今でも忘れない。