母は栄養士で43歳です。僕は19歳の学生です。赤ん坊がすすり泣くような声でした。それは母の喘ぎ声でした。ひきつているように不規則に、時には深いため息の様に…そして聞き覚えのない男の喘ぎ声が母の喘ぎと重なって部屋中に響いていました。母の寝室からでした。父の声ではありません。僕は玄関に立ち尽くしているだけでした。母の声がにわかに高まりました。そして声高に泣き叫びながら絶叫。意味不明の言葉の羅列。聞くに耐えない低俗な言葉の数々…僕は振るえていました。そして男の声「金は?」母「全部下ろしたよ」甘ったるい声…そして男は母の名を呼び棄てると、再び甲高く母の声が部屋に響き始めました。男の名前を君づけで連呼しながら「何でもする!何でもするから!ちょうだい…気持ち良いのちょうだい!!!」昨日の昼間のことです。母は居ます。優しく物静かな母が…僕は気づかれないように玄関を出てロックしました…少し離れた所に黒塗りの外車が路駐していました。母が心配です…あいつから引き離さなければ…知恵を貸して下さい。