「そろそろ飾ろうよ」と母さんに言った。「出して飾っておいて」と言い
母さんは、町内会の春の火防災の集会に出掛けた。仕方なく私は一人で
箱から出し、お雛さんをテレビの脇の棚に飾った。
ウチのおひなさんは、御だいり様と対のボンボリだけの寂しいものだが、
私が生まれた時、父さんが買ってきたものだという。
しばらくして、母さんが帰って来た。何故か母さんの顔は悲しそうに雲って
いた。無言で母さんは、ひな壇に小さなサカズキとお白酒を添えた。
父さんが、何週ぶりかで赴任先より帰って来た。しかし何故か母さんは無口
だった。父さんも私も風呂からあがり居間にいたのに、しまい風呂から
出てきた母さんは、パジャマ姿でそのまま寝室に行ってしまった。
「どうしたの?」とケゲンな顔をして、父さんは私に聞いた。
「わかんない」と言うと、父さんは心配そうに母さんの後を追った。
しばらくして、一体何があったのか私も気にかかり、母さんの部屋に向った
。暗い廊下の向こうに、ドアが少し開いて、光が漏れていた。
ソッと近づき聞き耳を立てた。母さんの悲しそうな声が漏れてきた。
<男の集まりでも、あんたの家では旦那さんが一度も出たためしがない>と
今日の集会で、誰かにイヤミを言われたらしい。
聞いていた私は悲しくなり、ソッとその場を離れようとした時、
「女の体って、本当にイヤらしいのね」と言う母さんの言葉に足を止めた。
なにが?と思い、ソッとドアの隙間から中を覗いた。
母さんは、見たことも無い赤いスケスケのベビードールの様なものを着て、
前開きのそれを両手で開き、ベットの脇の大きな姿見の鏡に自分の裸を映し
ている。それを父さんがパジャマ姿で後ろから抱いていた。
「女でも、そう思うのか?」「そうよ、なんでこんなに女は卑猥なんでしょ
、だから女はいくつになっても恥ずかしいのよ」「へー、そんなもんかな」
父さんは後ろから、母さんの大きなオッパイを両手でもんでいた。
オッパイをもまれウットリした顔をして、鏡に映る自分の裸体を見ていたが
小さな声で「お願い、おサネをいじって・・・」とつぶやいた。
父さんは片手を伸ばし、母さんの黒い茂みをまさぐった。
と、母さんはクルッと向きを変え、突然父さんの首にしがみ付き「あなた、
どうにかシテッ!」と叫んだ。父さんは立ったまま、母さんをしっかり抱き
しめた。すると母さんは「ワーッ!」と泣き出した。
「わかった、わかった。もう泣かんでもいい」と父さんは優しく母さんの
髪をなでた。そして母さんを抱えると、ベットに寝かせてM字形に開いた
母さんの谷間に静かに腰を埋めた。
母さんは再び、父さんの首にしがみ付くと自分の白い足を父さんの腰に
絡み付けた。
私はソッとその場を離れた。いま見た光景が、何故かイヤらしく思えないの
が不思議だった。
自分の部屋に帰りながら、点いてる居間の電気を消そうとした。
ふと見ると、だいり雛の人形が寂しそうに離れて並んでいた。
次の日、赴任先に帰る父さんが、真新しいスーツを着て、お雛さんの前に
ドッカリ座り、「お別れに、お白酒でもいただくか」と言い、飾ってある
小さなサカズキに白酒を注いだ。それはスグあふれ、白いネバッコイ酒が
あぐらのかいたズボンの股間にこぼれた。父さんは慌てて立ち、「テッシュ
、テッシュ!」と叫んだ。見ていた私は急いでテッシュでそこを拭いてやっ
た。そこへ母さんがやって来て「ナニしてんの!」と叫んだ。
玄関で見送る私達にスーツを着替えた父さんは苦笑いしながら出て行った。
<雛の酒、すそにコボして疑られ・・・・・>