昨日、単身赴任の父さんが久しぶりに帰って来た。何時もの事だが、昨晩の
母さんの鳴き声は悲鳴にも似て、二階に居る私にも聞こえるスゴイものだっ
た。
今日は、父さんが赴任先に帰る日。
学校から帰ると玄関に、まだ父さんの靴があった。探すともなく居間や台所
を見ても両親の姿がない。はて、何処かと縁側を見ると、二人は庭に足を
おろし、並んで縁側に座っていた。
声をかけ様として私はその言葉をのみ込んだ。父さんの片手が、母さんの
大きなお尻をスカートの上から撫でていた。
「父さん、あれ、スイセンの芽じゃないかしら」
「ああ、そうだな。もう春だ。向こうにも芽が出てるよ」
庭を見ながら、二人は仲良く日向ぼっこをしていた。
私はソーッとその場を去り、黙って二階へ上がった。それとなく、二階の
ベランダから二人を見下ろした。二人は肩を寄せ合い、庭を眺めている。
よく見ると母さんの片手が、父さんのズボンの割れ目から生えた大きな芽を
握っていた。さするでもなく、ただジッと握っていた。お尻を触られながら
。 小春日和の温かい日差し。しばしの別れを惜しんでいるのだろう。
なんとも、のどかだ。
そんな光景を見て、私はベットに横たわり、ふと昨年の秋を思い出した。
秋の夕暮れ、彼と川原の堤防でデートした時のこと。
彼はそのころ石川啄木の歌に心酔していて、堤防の草はらに寝転んで
「空にすわれし、十五の心」などと言った。そして私のお尻を撫でた。
川原にはイッパイ赤トンボが飛んでいた。私の腕にトンボがとまった。
そのうち、仰向けに寝ている彼の股間がテントを張った。
「苦しいの?」ときいた。彼は無言だった。私はズボンのチャックを下ろし
取り出してあげた。それは勢いよくボヨヨンと飛び出した。
私はあきれて手を離し、見つめていた。
するとトンボが飛んできて、その赤いサキッポにとまった。私は思わず吹き
出して「見て、見てっ!」と叫んだ。彼は首をもたげて、それを見て
「われ泣き濡れて、トンボとたわむる、、か」。二人で笑いながら彼のを
手で出してやった。
赤い夕陽を見ながら肩を抱き合い、二人で歌った。
「夕焼け小焼けの赤トンボ、とまっているよ サオのサキ」・・・・。