単身赴任の父さんが、二日連休で珍しく今日・明日と家に居る。
午後、居間を覗くとコタツに父さんは体半分を入れ、仰向けに寝て、新聞を
かぶる様に大きく広げて読んでいる。母さんは、その反対側に座りミカンを
食べながらテレビを見ていた。
久しぶりにノンビリした両親を見て、私は遠慮して、コタツの上のミカンを
二・三個もらって部屋に戻った。
夕方近くになって、再び居間に行くと、母さんは台所で夕食の支度をしてい
た。父さんはさっきの姿で、大きく広げた新聞を顔に掛けたまま、いびきを
して寝ていた。私は母さんが座っていた場所へ座り、消してあったテレビを
つけた。うるさいのか、父さんのいびきがやんだ。
しばらくして、父さんの伸ばした足が、私のひざ小僧にあたった。私は黙っ
ていたが、だんだんと執拗に両方のひざをさする様に足でさわる。たまらず
ソッと掛け布団を上げ覗いてみた。さわっているのは、まぎれもなく父さん
の足だ。その足の向こうを見ると、コタツの赤外線の光りに照らされて赤く
長くて太い異様なものが、ズボンの割れ目から生えていた。
ビックリして布団を下ろした。すると顔に新聞をかぶせたまま「こんや、
やろう」と父さんが言った。そして強引に私の股へ足を割り込ませてきた。
「なん、すんのよ!」と怒鳴り、私は立った。父さんはパッと新聞紙をはぐ
と半分起き上がり私を見上げた。まるで化け物にでも会った様なとんでも
なく驚いた顔をして私を見つめ、固まってしまった。
夕食の時間になり、台所に行った。父さんの姿がなかった。
「とうさんは?」と聞くと、「チョッと外で飲んでくると言って出て行った
の、お酒ならウチで飲めばいいのに」と母さんは悲しそうな顔をして、父さ
んのために作った料理を見ていた。
次の朝の朝食にも父さんは居なかった。聞けば昨晩、父さんはグデン・グデ
ンに酔って、遅く帰って来たとの事。そして一晩「スマン・スマン」とひと
り言を言っていたと。今朝は二日酔いで起きられないという。
その日の午後、父さんは仕事があるからと、早々に家を出た。母さんと二人
で玄関で見送ったが、その父さんの後姿は情けないように肩を落としてい
た。
まるで不発弾を抱え、戦地におもむく兵士のようだった。なんか、私が悪い
ことをしたような気持ちになり、父さんがあわれだった。
今度から気をつけます。 お父さん、本当にゴメンナサイ・・・・。