父は時々、母に五百円玉をチラチラ見せたり、渡したりする。それは決って
夕食後の団欒のひと時だ。僕が中学の頃、その父の行動が分からなかった。
その度に母は「また?うるさいなー!」とか「めんどくさい!」とブツブツ
言う。幼い妹は「そんなら私にちょうだい」と父にせがむ。父はただ笑って
妹にはやらず、母が受け取るまでチラチラ母に見せている。
やがて僕も高校に上がり、その訳がやっと分かった。昨晩も夕食後、父は
五百円硬貨を手に持ち、母に見せるようにチラチラしている。それを見て、
母は相変わらず「めんどくさい」だの「うるさい」とブツブツ言い出した。
その夜のこと、ソッと両親の部屋に近づき聞き耳を立てた。想像したとおり
だった。中から「もっとよ、ソコ、ソコ、ソコがたまんないの。ああ、いい
わ」と言う母のうめくような声が聞こえる。なにが「うるさい・めんどくさ
いだ!」と思った。
次の日、両親は用事があって留守だった。部屋の前を通るとかすかにドアが
開いている。忍び込んでくずかごを覗いた。丸めたテッシュの中にコンドー
ムがあった。それも二個も!。思ったとおり五百円玉は「今夜やろう」と言
う父のサインだったのだ。昨夜の様子では、母は好きものの様に思えたが、
あんなにいやな素振りを父にするのが不思議だった。
ふと、ベットの枕元を見た。そこには五百円玉がイッパイ入った口の大きい
透明のビンがあった。手に持ってみて驚いた。何百枚あるだろう。とても
数え切れないほど入っている。父も父だが、いやな素振りをしながら母も、
よくもマア、こんなにヤッタもんだとあきれかえった。それにしても、母の
マンコはたったの五百円か!安すぎる!。「千円出すから俺にもやらせ
ろ!」。