僕の両親について、不可解な事が一つある。父は長距離の観光バスの運転手
で、休日は不定期で旅先の泊がほとんどだ。母は専業主婦で、その母には、
独り身の姉がいて、僕が小さい時から、よく遊びに来ては一晩泊まっていっ
たものだ。その伯母さんは母に似ず、長身で体格がよく、不細工な顔をして
いて、独身もうなづけた。母はよく、独り身の姉を可哀想と言ってたものだ
。しかし僕は伯母さんが大好きだった。伯母さんは、僕にはとっても優し
く、泊まっての帰り際に、必ず僕にいっぱいのお金をくれるのが楽しみだっ
た。僕が小学の頃は、伯母さんが妹と話をしたくて来るんだと思っていたが
中学になった頃から、それが変に思えるようになった。と、いうのは伯母さ
んが泊まりに来る時は、必ず父も休みで家に居ることだ。2・3ヶ月に一度
のその日は、不定期な休みの父が、きまって居るのが僕には不自然に思え
た。その上、その日の晩は、母はいつも一人で居間にいて、テレビを見てい
る。僕がそこいらをウロチョロすると「早く寝なさい!」と、睨み付ける。
そこにはいつも、父と叔母さんの姿は無かった。子供心にも不思議だった。
高校になった、ある日のこと。久しぶりで伯母さんが泊まりに来た。
やはり父も休みだった。母はいつも僕を邪魔だという風にするので、その
晩は、皆で食事をしたあと、僕は早々に部屋に引き上げた。
夜の九時頃、下を覗くと居間の明かりが消えていた。もう寝たのかと居間に
降りたら、台所に電気が点いてて、やはり母は一人でテーブルの椅子に座っ
て、台所の小さいテレビを見ていた。僕はハッとして柱に身を隠した。
父と叔母さんの姿が無い。台所の向こうは父母の寝室だ。一人でいる、母の
姿が不思議だった。何が起こるのか、僕は隠れてみていた。
しばらくして、向こう側のドアが開き、伯母さんが乱れた髪を手で直しなが
ら、台所に入って来た。その叔母さんは、僕は見たことも無い真っ赤でフワ
フワの派手なネグリェジェ姿だった。すごく艶めかしく見えた。
「もう、終わった?」と言い、母は冷蔵庫に行き、ビールを出した。
「ああ、久しぶり。スッキリしたわ」そう言って伯母さんはビールをグイッ
と飲みほした。すると今度は、父がパジャマ姿で、アクビをしながら入って
来て、「ああ、のどが渇いた。俺にも一杯くれ」といった。母は「どうも
ご苦労さん」と言うと、叔母さんと顔を合わせてクスクス笑った。
「さあ、寝るか」との父の声に、電気を消して二人はいそいそと父に従って
寝室の方に消えた。
なんなの、あれは、と思う。父と伯母さんはセックスしたのだろうか。
それとも伯母さんがどこか悪く、父に何んか治療でもしてもらっていたの
か、僕は見ないから分からない。万一、セックスしていたとするなら、
母は嫉妬しない筈がない。母はそれとも自分の夫を姉に貸しているのだろう
か。了解の上の三角関係か。そんな事があるはずが無い。ましてや姉と妹の
間柄で。 僕にはこの三人が、不可解である。