交替で、お盆には帰省しようと申し合わせていたのだが、郷里の母からも、
無理に帰らなくても好いよ、と電話があり、9月になって帰省し、昨日帰っ
てきた。「変わりない?」「無いよ。」毎週の様に、声は聞いているのだ
が。母は、元気でやっている。と、安心しきっていた。
今度帰ってビックリ。前もって電話で、帰ることは、連絡してあり、当日
も、携帯で時間も連絡したあった。
「ただいま」「お帰り」大した家でもない。田舎屋だ。いつもなら、玄関
で、迎えて呉れる母なのだが、声だけで。「お母さんどうしたの」
母は、奥から、いざる出るように出てきた。
「お帰り」{どうかしたの」「なにもないよ」
母は、座ったママ。あわてて、靴を脱ぎ、座敷へ。
「お母さん」
「今車が来るの」「どうしたの」「病院へ行くの」
苦しそうな顔。話する間もなく、タクシーが来た。
陣痛が始まっていたのだった。
母の云うとおり、母の準備したバックを持って一緒にタクシーに乗り込み病
院に、母は、早速分娩室に。何がなにやら、さっぱり判らない。
44歳になろうとした母が、何で子供を産むのか。相手は誰なのか。
今日まで、毎週、欠かさず電話で話をしてきたのに。
お正月にも帰って、床を並べて語り合った母が。
私は、打ち明けて呉れ無かったが母に憤りを感じた。
だが、夜中に疲れ切った、しかし幸せそうな顔をして病室へ帰って来た母の
顔を見ると、「母さん、良かったね]。私は、涙が留まらなかった。
「じつはね」「今夜は、ゆっくり休んで」
どうしてこうなったのか。聞きたかった。母も云いたかったのだろう。
翌朝、3日ほど休みはあることを告げ、一度家に帰った。
家でゆっくりと休み、午後病院へ。母は、赤ん坊に、乳を飲ませていた。
恥ずかしそうに「むつかいいわ」といって、それでも気持ちよさそうな、顔
をしていた。
乳を含ませながら母と話をした。
私が上京し、仕事の関係で、雄二君をたのんできた。雄二君は、私の高校の
同級生で、進学をあきらめ、お父さんと農業をしている。
去年の、秋頃から、男の女の中になった。今年のお正月、帰省したときには
、兆候は有ったのだが、言い出すことは出来なかった。三月、隠すことが出
来なくなり、雄二君の両親とも話し合い、雄二君を入籍した。戸籍上は、結
婚。43歳になって。でも好きな事をして。私は、母さん良かったね」そう
して母を祝福するより云いようが無かった。