その日はお習字でしたが、先生の都合で午後7時には早めに帰れました。
帰り道おしっこをしたくなったので神社の境内に入りました。
境内の裏に行くと、男の人と女の人が抱き合ってキスをしていました。
恥かしくなって木陰に隠れてよく見ると女の人はお母さんでした。
男の人は家の裏のアパートに住んでいる学生でした。
お母さんの方が学生に抱きついて積極的に唇を合わせていました。
とても長いキスの後、学生が母に何か呟くと、母が頷いてそのまま手を繋いで
二人で境内を出て行きました。すると向こうの木陰から誰か出てきて、二人の跡を
付けていきました。僕のお父さんでした。
僕はそのまま帰りましたが、夜遅くになってお父さんだけ帰ってきました。
いつも物静かなお父さんがとてもこわい顔をしていました。
結局お母さんはその日以来帰ってきません。学生も引っ越したみたいです。
お父さんに聞くと、お母さんのことはもう忘れろと言いました。