赤信号に引っかかってしまって見失ったと思いましたが、海の公園の駐車場で
見つけました。母を乗せた白い乗用車が1台だけ停まっています。
車の中には誰も居ません。俺はバイクを見つからない離れた場所に停めて公園の
中に入りました。
季節はずれの公園は既に薄暗くなっているせいもあるんでしょうか、静まり返って
います。やっと見つけました。海を展望できるベンチに母と男が座っています。
男の素性はわかりません。母より歳は上のようですが、普通のおじさんです。
俺はバイクで通学してるんですが、参考書を買うんで立ち寄った駅前の本屋から
出たときに通りの向こうの四つ角で母を見かけました。
誰かを待っているみたいでそわそわしています。
母は40歳ですが、化粧と服装のせいでしょうか、とても若く見えました。
母は事務のアルバイトをしてるんですが、今日は仕事の日でもなく、この駅は母の
仕事先の最寄駅から3つ先の鈍行しか止まらない駅です。母に見つからないように
見ていると、白い車が母の前に止まって、母が助手席に乗り込みました。
車の中で母は嬉しそうな笑顔を運転席の男に向けて、車はすぐに発車しました。
家では父の浮気が原因で夫婦喧嘩が絶えず、母の笑顔は暫くみていませんでした。
暗くなった海を見ながら、母が男の肩に凭れかかりました。
そして男が頭を動かし、まるでスローモーションのように母に口付けをしました。
そのままで状態で母と男はキスを暫く続けていました。
やっと母と男の顔が離れ、男が母に何か呟くと母は男を見ながら頷いていました。
そして二人は立ち上がり、手を繋いで駐車場へと歩き始めました。
母と男は、途中で立ち止まってはキスをして、キスをしながら歩いて、また立ち
止まっては母が男に抱きついて、男に抱きしめられ、下半身を密着させてキスを
していました。男の手は母の身体を撫でながら、スカートを捲って母のお尻を触
ったりしています。
母と男は駐車場に停めてある車に乗り込むと、さらに国道の方へと車を走らせて
いきました。
俺はそのままバイクで家に戻りましたが、父は出張で帰ってこないようで、母も
仕事で遅くなると、メモ書きが残されていました。
母が帰宅したのは午前2時過ぎで、男の車で送ってもらったようです。
それから2ヵ月後、判を押した離婚届をテーブルに置いて行き先も告げずに母は
出て行きました。