男友達とセックスしてしまった。本当に、ただの「とても気が合うお友達」だったのに。
高校1年生の不安いっぱいの春、知っている顔よりも知らない顔の方が多い新しいクラスで、彼はめいっぱい人なつっこい笑顔でわたしを迎えてくれた。どっちも新入生だから「彼が迎えてくれた」というのはおかしいけれど、わたしにはそう思えたのだ。そしてわたしはなついたのだった。もしかしたら、彼でなくも良かったのかも知れない。けれど、1年が過ぎた春、わたしにとって彼は「彼でなくてはダメ」な存在になっていた。
というのも、ある日わたしは気が付いたのだ。彼の笑顔は、誰に対してでも向けらているものではない。わたしだけのものだった。でもわたしは彼に対していわゆる「恋愛感情」というのが持てなかったので、もし告白されたらどうしようかとずっと思っていた。
告白されて好きになる、というのは良くあることだけど、わたしと彼とが二人で作り上げてきた親密な友達関係の方が重くて、わたしはきっと受け入れられない。「わたしのこと好きなの?」って何度か訊こうとしてやめた。それがわたしからの告白だと思われても困るし、訊いたことが原因で微妙なバランスが崩れるのも怖かった。
そのくせ二人のことがうわさになると、わたしはホンの少し彼のことが好きになりかけていた。「迷惑なうわさだよね」と、彼は言った。わたしは少しだけがっかりしながら、でもめいっぱい安心して「そうだよね」と言った。
うわさなんていい加減なもので、私達が取り合わないとわかると、いつの間にか消えてしまった。2年生になってすぐ、「エッちゃんはキスしたことある?」と、彼が言った。「ないよ」と、わたしは答えた。「なんでそんなこと訊くの?」
「キスしたことがあるかないとか、エッチしたことがあるとかないとか、女の子の間では話題にならない?」「そりゃあなるけど」「ねえ、キスしようか」
「ええ?」「だって、俺、したことないから、どんな感じか知りたいとか思って。ごめん、変なこと言って」わたしは驚いたけれど、どんな感じか知りたいのはわたしも同じ。
「しようか。してもいいよ」と、わたしは答えていた。私達は唇を重ねた。場所は放課後の教室である。「誰かに見られたら困るよね」と、彼が言った。
「別にいいんじゃないの?私達はとっくに恋愛の対象になってないから誰も傷つかないし、みんな『やっぱり』って思うだけだから」「そうだね」もういちどキスをする。今度は長い長いキス。
いつやめたらいいの?わからない。わからないけれど、やめたいとも思わなかった。暖かくて柔らかいものが触れあっているって、気持いい。彼と口づけを交わしていることに違和感を感じない。だって、こんなに仲がいいんだもの。
彼が唇を割って舌を入れてくる。そうだ。ディープキスって言うんだ。舌を絡め合う濃厚なキスの存在に思い当たり、わたしも彼に応えてあげた。体が熱くなってきて変な感じ。