エッチなシーンとかはないです。それでもよければ…
あの頃…電車の最寄り駅から長々バスに揺られてやっと辿り着く静かな町で私は暮らしていました。
実家住まいです。
例えば、アルバイトのない平日の雨の日などは、本当にすることがなかったりします。
生まれ育った土地ではありましたが、元々社交的とはいえないわたしは友人も少なく、当然彼氏などもいません。
少ない友人らとは休みの日程が合わず、あの頃は本当に独りでいることが多かった…
そんなわたしの唯一の退屈しのぎがテレクラに電話をすることでした。
出会い目的ではなく、誰かと話したかった。
実際、アポ云々の話になるとお断りしていました。
そんなある時、しとしとと降り続く雨の休日でした。
電話で一人の男性に繋がったのは…
最初から少し違和感がありました。
即アポを取りたがる急いた感もなく、電車の相手に関心があるようでもない。
かといって、けしてぶっきらぼうではなく、自分が喋るよりこちらの話をきちんと聞いてくれている感じなんです。
あまりいないタイプの人だなあ…と、考えながらも、どこか惹かれたんでしょう、いつの間にか長話に…
その方の退出時間?が迫ってるという話を聞き、何か物足りなさを感じたわたしは、
「車ならこっちの方に遊びに来ませんか?」
などと、自分でも信じられないセリフを…
偶然にもわたしの住んでいる町に土地勘があるらしい彼は、ついでに寄ってみようかね…くらいの感覚で、たぶん何時頃に○○橋に着くだろうから、気が向いたらおいでよ。
そう言いました。
トントン拍子に話は進みましたが、彼はわたしに返答を求めませんでした…
自分でも、この時点で行くかどうかは決めかねていたんですが…
それでも、結局は行くんだろうな的な予感もありました。
ですが、いざ時間が近づいてくると勇気が出なくて…wウダウダとしてるんですが、ちょっと本当に来てるか確認するだけ…とか、自分に言い訳してなんとか玄関を出ました…
渓流に掛かる大きな橋が目印でした。
午後の中途半端な時間のせいか、車もたまに通るくらいのものです。
その橋の入口付近に一台車が停まっていました。
色や形からほぼ断定できました。
あ~本当にいる…
初めての待ち合わせですから、来るまで半信半疑でもありましたし…
ただ、ゆっくり近づいていくと、中にはいないようでした。
となると、下の河原です。
わたしは濡れてる欄干に触れないように下を覗いた…
透明のビニール傘をさして、川の水の流れを見ている男性がいました。
前置きが長くなってすみません…
この人に、この日、わたしは処女をあげました。
(あげたなんてもったいぶってるようですけど)
正直、ここまで書いて、このあとをどう表現すればいいか、迷ってます…
わたしは、何の根拠もない直感としかいいようがないんですが、最初にこの人をみた時思ったんです…
なんて儚い後姿なんだろうかと…
いや、正直にいいますね。
この人、もう最後を決意した方なんじゃないか…
そう感じたんです。
わたしは引き返すどころか、自分から河原に降りて行きました…
そのあと車に乗り、近場でたった一つの観光施設に行きお団子を食べたりしました。
危ない相手だったら的な警戒心は全くなく、どちらかというと積極的だったのはわたしかもしれません。
小雨が降るなか団子を食べる男女…
端から見るとどういう関係に見えたでしょうか?
親子ほど歳は離れてなさそうで、兄妹にしては離れすぎ…微妙な年の差です。
ただ一緒にいて居心地はいいんですね。
それは昨日の事のように思い出せます。
それで、もうそろそろとお開きかとなり、家の近くまで送ってもらった別れ際、彼が照れくさそうにいいました。今日の記念にハグさせてほしいと…
わたしは不思議と何の抵抗もなく言われるままに。
彼の体からは少し雨の香りがして、
わたしはこのまま別れてはいけない気がして、信じられない度胸で、じぶんから抱いてほしいと言ってました。(あの当時の自分のキャラを思い出すと、未だに信じられない!)
最初彼は、それはもったいないからやめた方がいい…
そう言いました。
でもわたしは…
それでもやっぱりとお願いしたんです…
彼は彼なりに思うところがあったのか、わたしにとって少しでも良い想い出になるよう、色々と気を使ってくれてたのが、歳を重ねるごとによくわかりました。
事が済んでかなり豪勢な食事をし、再び送ってもらった彼は、わたしに、ありがとね…
それだけ言って連絡先も聞かずに走り去っていきました…
少し淋しい気もしたけど、そんな気もしてたので…
本当は複雑だったんですけどね。
二日後…
少し離れた山で彼の死体が発見されました…
わたしは…う~ん、今でもこの時の気持ちをうまく表せない。
でも、泣かなかったです。