田舎の高校を卒業して、県庁所在地の教材会社に就職した俺。
社員は社長、社長の息子の専務、営業兼配達もしながらの営業職は俺含め七人。
事務は社長の奥さん、専務の奥さん、そして美穂さんという女性社員さん、合計十二人という小さな会社でした。
田んぼ、畑、山くらいしかないど田舎から町に出てきた俺は、慣れない一人暮らしもあり、鬱々した生活をしてました。
それを救ってくれたのが美穂さんでした。
俺と干支でちょうど一回り違う、十二才年上美穂さんは同じ未年生まれ。
×1で四才になる息子と二人暮らしの女性でした。
美人ってわけでもない、可愛いってわけでもない美穂さんですが、ぽっちゃりした身体をよく働く、明るい性格の女性で、ミスばかりの俺をよく励ましてくれて、少しずつ俺は恋心と言うより、憧れみたいな気持ちを持つようになってました。
俺二十才、会社での成績も上がらず、辞めちまおっかな~、そう思っていたときです。
その会社、土曜は午前半日の営業だったので、良かったら息子の遊び相手してくれないか、そう誘われました。
帰っても暇な俺はOKし、美穂さんの家近くの公園で、息子さんとボール遊びをしたりしてました。
夕方、美穂さんが公園にきて、食事用意したから食べていってと誘われ、すっかり慣れた息子さんも誘ってくれたので、一緒に夕食を共にすることになりました。
そこで話しをされたのが、いつも威張り散らしている先輩の一人でした。
入ってきたときはいつもミスばかりで、社長専務、社長の奥さんから怒られてばかり、一度は社長からクビを突きつけられ、謝り謝り居残って、今では一端の顔してる、そんな話しでした。
大笑いした俺は、気分が少し晴れて、その日、自分のうちに帰ってきて、久々によく寝れました。
それから時々、美穂さんに週末誘われた、息子さんと遊び、夕食をご馳走になるようになりました。
恋心?憧れ?みたいな気持ちを持っていた俺。
でも女性との経験どころか、付き合った経験すらない俺は、こんな近くにいる美穂さんに、どうそれを伝えたらよいかがわかりません。
子供がいるため、忘年会とかの席にも来ない美穂さんが、お酒飲むのかも知らずでした。
いつもご馳走になってばかりで、手土産も持っていかなかった俺はその日、ビール数本を買って持参しました。
俺もお酒はほとんど飲めないのに、でした。