涙が止まらなかった。
人目をはばかることも無く涙が溢れた。
電車の窓越しに真っ赤な夕陽を浴びていたからじゃない。
確かに眩しかったけど、私の涙腺は崩壊していた。
早退した私は彼のもとへと急いでいた。
ほんの少し前、職場に掛かってきた電話。
それで、彼の死を知らされた。
二日前、楽しくファミレスで夕食をともにして別れた。
「それじゃ、またね」って…
次、また逢うことに疑念を抱くなんて少しもなかった。
あたりまえに逢える日々がずっと続くと思ってた。
それなのに…
彼は事故で逝ってしまった。
ほとんど即死だった。
暴走したクルマに跳ね飛ばされた身体は民家のブロック塀に叩きつけられた。
交番の目の前での事故だった。
今も信じられない。
彼の棺には、お気に入りだったペアの私のTシャツを忍ばせてもらった。
Tシャツには、心からのお別れのメッセージをしたためた。
それ以外は、ただ泣くことだけしか出来なかった。
いつも私のおしゃべりに付き合って屈託なく笑ってくれた彼…
飾らない素の私をいつもいつも好きだと言ってくれた。
私もそんな彼に甘えて仔猫のように戯れた。
せつない恋の終わりだった。
あれからもう何年も恋愛らしいことは何も無い。
離婚した兄と夫婦のようにまた一緒に暮らしている。
もとに戻っただけのこと。
彼に求められた時、素直に応じられなかった。
今となっては後悔しかない。
汚れた自分を卑下していた。
あたりまえだと思う。
近親相姦のみならず、様々な調教を受けて男性達の玩具になってた。
与えられるままに快楽を享受して堕ちていく自分を見失っていた。
性奴隷として乳首と性器にピアスを施された裸体を彼に晒す勇気は無かった。
それらを外す覚悟も無かった。
自問自答を繰り返したけど…
結局、私はずっと牝犬ちなのまま。
好きだった兄に処女を奪われるように捧げた。
それから兄の従順な奴隷になることを誓った。
彼の真摯な気持ちに応えられなかった事が悔しい。
裏切っていたのかもしれない。
こんな私でも受け入れてくれたかもしれないのに…
思い出すたびに切ない。
アラサーになって過去をどれほど後悔しても時間は戻らない。
罰が下ったのかもしれない。
私は今だに首輪を嵌められたまま快楽という鎖に繋がれている。
人並みの幸せなど求めたことは無かったけど…
只々、悔しくて悲しくて切なくて…
久し振りのお墓参り。
彼の墓前でまた泣いた。
懺悔の価値も無いけれど、今日も私は生きてる。