アパートで一人暮らしの姉のところに初めて止まった夜。
二人で酒を結構飲んだが、たいして酔わなかった。
二人別々に風呂に入って、姉と布団を並べて横になった。
俺も寝付けなかったけど、姉も同じようだった。
寝付かれない姉は「しんちゃん寒くないの?」と何度も声をかけてきた。
俺は、そのたびに「寒くないよ」「大丈夫だよ」と、何度も答えていた。
姉は布団の中にいる俺の寒さを気遣って声をかけてくれたのだと思った俺。
「ちょっと寒いかな」が言えなかった俺。
鈍感・馬鹿・チャンスをみすみす逃す俺。
ガキと同じ程度の頭しかない俺、ガキの方がまだましかも。
残念、こんなチャンスはもうないだろうな。
もう、姉のアパートに泊まる機会はないだろうな、泊まったとしてももう同
じように声はかけてこないだろうな。
こんな自分がイヤになる。