僕と母のことについて書こうと思います。
僕は19歳、母(悦子)は46歳で、二人で暮らしています。父は、6年前に病気で亡くなりました。熱中症でした。40の女盛りを一人で過ごしてきた母でしたが、5ヶ月くらい前にいい人が出来まして、僕にも『お母さん、お付き合いしてる人がいるの。』と紹介もされました。母より、6歳も年上の方でした。物静かな印象ですが、優しそうな方でした。
お付き合いも順調のようで、よく夜に出掛けていまして、帰って来ると母から微かにシャンプーや石鹸の香りがする時もありましたが、僕も大人ですから深くは聞きません。なにより、その方は父親になるかも知れない方ですから。
ある夜、デートから母が帰って来ました。ちょうどトイレから出てきた僕は『おかえり~』と出迎える格好になりました。母は笑顔で『ただいま~。』と答えますが、目のあたりが赤く腫れ、泣いた後のように見えます。僕の視線に気がついたのか、みるみる涙が溜まり始めて『来んとって!』と自分の部屋に逃げ込みます。(あの人と、何かあったんだろうなぁ。)
20分くらいたったでしょうか?心配になり、母の部屋に向かいます。『母さん?』と声をかけてみます。『入って来んとって!』と中から答えます。やはり、泣いているのか涙声です。(どうしようか?)と考えましたが、やはり入ってみます。ドアに手をかけて『どうしたん?』と入ります。
母は座り込み、ティッシュで目を押さえていました。しばらく、横に立って母の行動を見ます。時折、『大丈夫やから…。』『心配しないでええから…。』と僕に声をかけて来ます。僕は何があったのかなんてことは、聞きませんでした。
泣いた母を見るのは、父が死んだ時以来です。あの時は、毎日のように泣いていました。こんな母を見るのは、久し振りです。
座っている母の膝に、僕も膝を当てるように座ります。ティッシュで目を押さえながら、決して僕の方は見ません。僕もどうしていいものか、取りあえず母の顔を見ながら様子をみます。しばらくして、母は僕の顔をチラッと見ます。途端でした。我慢の糸が切れたのでしょうか、僕に抱きついてきて泣き始めました。余程、我慢をしてたのでしょう。僕はどうしていいのか分からず、取りあえず母を抱きしめて、背中をさすってあげます。ほんと、こういう時ってどうするのが正解なのでしょうか?
『大丈夫やから…大丈夫やから…。』と声をかけてあげます。しかし、意外と冷静な自分がいます。(母さん、石鹸の香りがする。ホテルに行ったんだろうなぁ。)とか(当たってる胸、やわらかいなぁ。)とそんなことばかり考えました。
5分くらい泣いてたでしょうか?母は突然『ごめん、ごめん。ありがとう。大丈夫、大丈夫。』と顔をあげます。抱きしめていた手は離れたのですが、無意識にそのまま手を取る格好になります。手をとって、顔を眺めた母の顔は、上手く言えないけど、すごく大切なものに思えて、そのまま唇を重ねていました。母も正常な状態ではなかったのでしょう。それに答えてくれていました。
母とキスをしていましたが、『親としてるような感覚』でした。当たり前なのですが。