「一人で大丈夫だよ」
「危ないから一緒にいるよ」
兄の迎えを待っている間、友達になったばかりの男の子が手を繋いできた。
(祐君に見られたらヤバイなぁ)
寄った頭で考えたけどぼんやりする。
「飲み物買って来ようか?」
「あぁ…ありがとう」
(優しいな…)
自販機に歩く男友達の後ろ姿を見ながら、恋の始まりみたいなんて思った。
スポーツドリンクを渡してから男友達が言う。
「メールしても大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
楽しそうに笑う男友達を見ながら、自分とは違う世界に居る人のように感じた。
「あのさ…彼氏いないんだよね?」
「…うん」
胸の奥がチクッとする。
「理想高い?」
「そんな事ないけど」
「そっかそっか」
私は、男友達の独り言のような呟きに返事をしなかった。
「そろそろ、お兄ちゃん来そうだから」
私は手を離した。
「見られたら恥ずかしいし」
なぜかフォローしてる私がいた。
たわいもない話しをしてるうちに兄の車が着いた。
「あ~たぶんアレ」
ハザードをあげて路駐した車に走る。
助手席に乗り、窓を開ける。
「ありがとう」
「気をつけてね」
男友達が車内を少し覗きこみ兄をチラッと見た。
「いいか?」
私が頷くと車は走りだした。