朝起きて鏡を覗くと、少し腫れた目の私がいた。
欲張り過ぎなのはわかってる。
兄がブレーキをかけようとしてるのもわかってる。
兄が思う程、私は子供じゃない。
化粧をしてワンピースを着た。
あてはないけど適当にブラブラしようと思い家を出た。
地下鉄に乗り二駅過ぎた辺りで兄からメール。
『今、どこ?』
『地下鉄』
『次の駅は?』
『〇〇駅』
『降りて待ってて迎えに行くから』
次の駅で降りて兄を待つ…しばらくして兄の車が来た。
「お母さんは?」
「卓球」
「あぁ…そうなんだ」
母は卓球に行くと夜まで帰って来ない。
「コーヒーでも飲みに行くか?」
「私、朝飲んだからいい」
沈黙の後、兄は車を走らせてコンビニに着くと缶コーヒーとお茶を買ってきた。
私はお茶を飲みながら言葉を選んだ。
「あのね、彼氏作ろうかと思って」
「そうか」
「…うん」
「好きなのか?」
「これから好きになる予定」
言いながら苦笑いの私。
「なんで好きじゃない奴と付き合う?」
「あ~それは…」
思いきって言葉を吐き出した。
「私が消えたら楽になるでしょう?」
兄の眉間に皺が寄った。
車を走らせた兄が向かったのはホテルだった。
「もうやめよう、祐君」
私の制止も聞かないで車は駐車場に滑り込んだ。