〈はじめに〉
俺が薄汚れフェチを自覚したのは少年時代のバイオハザードというゲームがきっかけであった。
特に俺は特定のものにフェチズムを感じるタイプではなかったが、バイオハザードシリーズの中の女性主人公たちの汗と血と土と硝煙でまみれた姿、特にポニーテールにタンクトップ姿を見て猛烈な性的興奮を覚えたのが全ての始まりであった。
そんな俺はサバイバル系の映画、ドラマの虜になった。少し前のもので言えばウォーキングデッドなどが記憶に新しい。
そんな俺は映画やドラマでは飽き足りず、自分の世界を創造するようなっていった。
フィギュアなどを購入しダメージ加工(ウェザリング)を施したり、テントやボロボロのキャンピングカーをスクラッチ(市販ではなくゼロから全部自分で作るプラモデル)したり、俺の「サバイバル、薄汚れて戦う女たち」のフェチズムは趣味を超えて芸術にまで昇華していった。
〈映画サークル〉
そんな俺は文化芸術系の大学へと進学し、映画サークルへ加入していった。
1年、2年の時はサークル内での発言権は弱く3年になってからやっと映画サークルで制作する内容に口を出せるようになっていった。
ちょうどその時の映画サークル内での担当顧問から出された課題が「15分のショートストーリー」であった。
担当顧問がいうには「ストーリーの内容よりもどれだけ世界観を深く掘り込んでいるかを見ていく。そしてセリフは不要。目と背中で語れ」というものであった。
俺たち5名のグループの班の中では、そもそも世界観をどうしていくか?を議論しあった。ある者は学生運動当時の若者の素顔、またある者は片思いが一瞬の出来事で消えていく儚い青春、そして、、俺が提案した宇宙人侵略によるサバイバル世界での一コマであった。
しかし、学生運動系は思想色が強く反対意見多数。
恋愛系は童顔のイケメンがいないという理由で不可能。
宇宙人サバイバルは奇想天外すぎて賛同者ゼロ。
結局、意見はまとまらずグループ内でも険悪なムードが流れ始めた事により、最後は担当顧問が好きな「西部劇」をやろうという判断となった。
西部劇を選んだ理由は担当顧問の影響で映画サークルの中に衣装、小道具などが割と揃っていたので1から作るよりはやりやすい、また西部劇なら担当顧問からの評価も得やすいであろうという魂胆もあった。
そこで俺たちが考えた15分の無言の西部劇というのは、西部劇イコール、無法者VS権力 馬、カウボーイといったステレオ的な者ではなく、ここは担当顧問の狙いを外したストーリーを描こうと提案したの監督である俺だった。
〈監督デビュー〉
俺が考え出したストーリーは、主人公はカメラであった。
行き倒れした人物(遺体)役のカメラを雨天の森林に設置し、そこに通りすがりの地元民が集まってくるという設定。そして最後に行き倒れした人物の身内がかけより、カメラを揺らす(目を覚ましてくれ!と言ってる設定)たったそれだけであった。
この作品の狙いは、遺体役にカメラを起用する事で登場人物を1人増やせるという点。また通りすがる人物は様々であり、無法者、農夫、牧場主、銀行家、身内などバラエティ豊かにできる。そして最後の身内と思しき人物と遺体役との間柄はなんだったのか?その点には一才触れずに考えさせる。という15分構成であった。
幸い、衣装は揃っていたし、奈良県にはロケ地候補の荒野は沢山あった。
俺たちはあえてカメラ性能の悪さを誤魔化し、かつ雰囲気を出すために夕暮れの雨天の日を選びロケに及んでいった。
だがそこで思いがけないハプニングに見舞われるのである。
〈ロケ当日〉
あえて天候の悪い日を選び生駒山系への軽登山を始めた人物は以下の通りであった。
①無法者役→佐藤(男)
②農夫役→鈴木(男)
③聖職者役→伊藤(男)
④身内→山下(男)
⑤◯婦役→ちひろ(女)
⑥遺体役→カメラ
⭐︎監督、衣装、小道具、背景、メイク→俺
スケジュールではロケ候補地に到着した後にそれぞれ衣装に着替え、撮影を開始する予定。
12時に登山開始。撮影時間は1時間〜。予定では16時、遅くても17時には下山する予定だった。
だが「ダメージ加工、ウェザリング」に強烈なこだわりを持つ俺の提案で、登山前から衣装に着替え意図的に雨に当たりながらぬかるんだ地面を歩く事でリアルさを追求していこうと言ったのだ。
監督の俺が言うならまぁいいよ。確かに一理ある。という理由で駅のトイレでそれぞれの衣装に着替えた俺たち。当然、周囲からは数奇の目で見られた。
だがカメラ機材なども持ち歩いていた事で大学生の何らかの活動だろうと言うこともあり特に職質される事などはなかった。
だが、ちひろだけは「別の意味での」数奇な目に晒される展開となった。それもそのはず。ちひろの衣装は◯婦の衣装である。白いフリルのついたワンピースに皮巻きのコルセットなのだ。当然、雨に打たれる事によって白いワンピースから水色の下着が透け始め、登山開始してからは肌にまで生地がべったりと吸い付く状態になっていった。
ちひろは当然「めちゃ透けてるやん」と嫌そうにしていたが、「まぁリアルといえばリアルだよな」と集団での意思には逆らえず渋々と透けたワンピース素顔で山を登って行ったのだ。
〈撮影前の雰囲気作り〉
撮影のための登山といえど折角だから日帰りキャンプっぽい事もしようと考えていたのが若者の俺たちだった。
ロケ地へと到着したメンバーたち。
すると聖職者役、身内役はともかく、無法者、農夫、◯婦の3名はせめて多少酔っ払ってる方がリアルであるとの理由から、西部劇っぽく持ってきたウィスキーを飲み始めたのだ。
この頃は楽しかった。雨でずぶ濡れの中で西部劇のコスプレをした男女がワイワイと酒を飲んで肉を焼いたりと、まさに西部の空気が華もし出されていた。この勢いで撮影に及べば顧問のいう世界観の深掘りはきっと成功するであろう。
だが若者の俺たちは撮影よりも、その場でのコスプレキャンプの方に流されてしまい、「このままの勢いで夜明かして朝方撮影するのはどう?」と誰かが言い出したのである。
だれも止める者はいなかった。理由は酔っ払って勢いがついていた。それだけの理由である。
それに、夜通し飲んだり遊んだりすれば衣装も程よく汚れるし、顔や腕にも多少の土汚れもつくであろう。「リアルさ求めて野営するか!」となっていった。
だが季節は夏、19時になっても空はまだ明るかった。
結局、夜通しは無理だな。まだ太陽が出てるうちに撮影して帰ろうとなった頃には全員が酒を飲んで出来上がっていた。
〈撮影開始〉
それから定点にカメラを設置し、レンズに雨が当たらないように傘を設置。そしてそれぞれ配役どおりカメラの前を素通りして遺体役を各々の表情で見つめるのであるが、、、誰かが言い出したのだ。「ちひろだけ浮いてる」と。
そしてなぜちひろだけ浮いてるように見えるのか?と話になると、これも酔ってて覚えてないのだが、誰かが「◯婦なのに整いすぎてる。普通、◯婦って色々男を相手にした隙間時間に外にタバコとか吸いにくるものだろ?今のちひろはただ雨に濡れてるだけやん」みたいな事を言い出した者がいたのだ。
すると集団心理の魔力「たしかに」と一同が意見を合わせてきたのである。
そこで演出担当でもある俺(酔ってる)は、「ちひろちゃん、佐藤(無法者役)と付き合ってるんだろ?今からヤッてきらきたらいいんじゃない?ヤッた後の顔って独特の汗ばみとかオーラでてるよな?」と俺がいってしまったのだ。
するとちひろ以外のメンバーは「おお!それいいな!」と同意しだし、彼氏である佐藤ですらも、「俺はちひろの正式な彼氏だからヤレるんだせ、うらやましいだろ」くらいの勢いであった。