私は、主人と、〇〇〇の仕事をしている娘と、娘婿の譲二さん(仮名)と一緒に暮らしている四十代後半の母親です。娘と譲二さんは今年結婚し、譲二さんは婿養子となって我が家に来てくれました。譲二さんは音楽関係の仕事をしていて頭が良く、清潔感やセンスもある上になかなかのイケメンで、私は素敵な男性が我が家の跡継ぎになってくれたことをとても嬉しく思っていました。
私の趣味はカラオケで、主人は歌が超苦手でカラオケは全くしない人ですが、娘も譲二さんもカラオケが好きで、娘が初めて私に譲二さんを紹介してくれた時、私と娘と譲二さんの3人でカラオケをし、譲二さんがとても歌が上手でしたので私はその美声に驚いてしまいました。譲二さんの歌声は、高音がとてものびやかで力強く、繊細な表現力もあり、私は譲二さんの歌声に聴きほれてしまったのです。
私は人前で歌うことが好きで、いろいろなカラオケの大会に出場していましたが、優勝はおろか、入賞すらできませんでした。審査員の方に、私の歌のどこが良くないのか、お聞きすると「貴女の歌は、高音が弱くて、いまいちインパクトがないんですよね。もう少し高音がのびやかに力強く出るように勉強してみてください。」と言われました。
主人は、私が何度カラオケ大会に出ても入賞すらできないので私に「おまえなあ、もういいかげん、カラオケ大会に出るのやめたらどうだ。いくら出たって入賞すらできないんだから。恥ずかしいよ。同僚からな『あんたの奥さん、まあ美人なのはいいけど、歌、そんなにうまくもないのに、よくカラオケ大会に出てるよな』って皮肉言われることがあるんだぞ。おまえには歌のセンスがないんだから、もうカラオケ大会には出るなよ。」などと言って私を馬鹿にし、私はとても悔しい思いをしていました。
私は次に今年の〇月に開かれる某カラオケ大会は、これが私がチャレンジする最後の機会と心に決め、この大会に出て、何としても、少なくとも入賞を果たし、主人を見返してやりたいと思いました。
そして、どうしたらもっと高音がのびやかで力強く出るようになるのかしら?と思い、発声に関する本を読んだり、ユーチューブの『こうすれば高音が楽に出る!』みたいな動画を見て勉強しましたが、よくわからず、努力しても進歩せず、悩んでいました。
そんなとき私は、譲二さんがとても歌が上手で高音がのびやかに力強く出ていたことを思い出し、仕事から帰って来た譲二さんに、どうしたらミーシャさんやドリカムの吉田美和さんのようにのびやかで力強い高音が出るのか聞いてみたのです。譲二さんは「僕が、おかあさんの歌を診断してさしあげますよ。カラオケに行きましょう。カラオケに行っておかあさんの歌を僕によく聞かせてください。」と、こころよく言ってくれましたので、その日の夜、娘は夜勤でいませんでしたので、譲二さんと二人で近くのカラオケに行きました。